問題はそれだけではありません。昨年は「空前の賃上げブーム」などとメディアは騒ぎ立てましたが、時間外や休日手当を除く「所定内給与」は、大卒の男性20代前半・後半では、前の年からの伸び率がそれぞれプラス3.1%、プラス3.4%だったのに対し、30代後半は0%、40代は1%台、50代前半はマイナスでした(内閣府調べ)。
勤続35年以上・大卒者の平均退職金額も、97年の3203万円から22年は2037万円と、1166万円も減り、退職金制度がある企業も89%から75%に低下しています。
つまり「中立的な税制」「中立性のための見直し」という美しい大義名分が、退職金の制度や額が保証されている大企業のサラリーマンの優遇策になりかねない矛盾をはらんでいる。
議論するのは大いに結構ですが、政府が「いったい何のための退職一時金課税見直しなのか?」「中立とは何なのか?」をきちんと整理して、説明しないことには納得できません。
それにしてもなぜ、こんなにも企業側は長期雇用を嫌うのか。超高齢社会で40歳以上が増え続けている現状を鑑みれば、いかに愚策か分かるはずです。
しかも、現場から聞こえてくるのは「後輩に技術移転もしたいけどうまくいかない」「リーダー不在」「下が育たない」といった中堅社員への不満です。
「40代になると転職が不利になるから今にうちに」と去っていく30代の社員や、キャリアアップ=転職と考え、管理職になりたがらない中堅社員に苦悩し、「いったいいつまで、私が頑張らなきゃいけないのか?」「自分がここにいる意味あるのか?」と疲れ切っているのが、今の50代の管理職です。
彼ら、彼女らは、Z世代をはじめとする若手とのコミュニケーション不安に悩み、若手ばかりに期待する社会の空気を痛いほど感じ、「自分は老害になっていないか?」と老害不安に苛まれ、「お金は足りるのか?」と老後不安を抱えている。
そんなベテラン社員の心の穴を埋め、彼らの能力を最大限に引き出すのが、心理的契約です。
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