それでは、この「ねじれ」を解消するためにはどうしたらよいのでしょうか。実は組織文化のあり方自体は多様であるため、そこにひとつの正解はありません。各企業が自分たちのありたい組織文化をみずからデザインすることが大切なのです。
一方で、メンバーシップ型雇用のもとで作られた、多くの日本企業に典型的にみられる旧来の文化からの脱出という観点からは、例えば次のようないくつかの改善が必要なポイントが指摘できると思います
組織文化づくりはすぐには成果が出ないことも多く、じっくり腰を据えて取り組む必要がありますが、その際の最も重要なアプローチの一つが「対話」の活用であると私は考えています。なぜならば、文化とは個人の価値観や生き方の領域にまで内面化されているために、その変化に際しては、外側からの変化圧力だけでなく、内発的に湧いてくる納得感や、みずから変わろうという思いが不可欠だからです。
次に対話の活用という観点から、上に述べた3つの古い組織文化の変革について見ていきます。
年功序列を前提としたメンバーシップ型の組織では、どうしても上下関係や立場が、コミュニケーションの障壁となることがあります。しかし、ジョブ型雇用では、年齢や社歴に関係なく、それぞれの職務における専門性や責任に基づいて、対等な立場で意見を交換することが求められます。
日頃から対話を重ね、互いの意見や考えを尊重し合う習慣を身につけることが、序列意識を弱め、フラットな関係を相互に結びなおす「リ・コミュニケーション」(関係性の再構築)の機能を促進するのです。
日本には言葉にしなくても分かり合える「阿吽の呼吸」を美徳とする文化がありました。しかし、現在では多様な価値観やバックグラウンドを持つ人が共に働くことが多いため、「暗黙の了解」は通用しにくくなっています。
これからは対話を通じて、自分の考えや意見を明確に言葉で伝え、相手の真意を丁寧に確認する習慣を身につけることで、誤解を未然に防ぎ、スムーズな意思疎通を実現できるでしょう。
メンバーシップ型では、会社が社員のキャリアをある程度決めてきました。しかし、ジョブ型では、社員一人ひとりが自分のキャリアプランを自ら描き、主体的にキャリアを形成していくことがより求められるようになります。
これからは一人一人が自分の意思をより明確にし、意思を表現したり、主体的に行動できるようになる必要があります。そのためにも対話の場を活用し、話し合いの中で個人の思いや考えを互いに引き出しあうような習慣を作ると効果的でしょう。
ジョブ型雇用への移行は、単なる制度改革ではなく、組織文化の変革でもあります。そして、文化の変革を効果的に進めていくための鍵を握るのが「対話」です。社員どうしが本音で対話できる環境を整備し、「対話」を文化として根付かせることが、これからの組織づくりの重要な取り組みの一つといえるでしょう。
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