藤沢市コンタクトセンターは、コールセンター大手ベルシステム24に運営を委託する形で開設した。電話やメール、有人チャットなど、市に寄せられる問い合わせ対応を、同センターが一元的に担う。
市民にとっては、これまでばらばらに存在していた行政とのタッチポイントが集約され、利用しやすくなった。職員にとっても、一次対応はコールセンターのオペレーターが担うため、負担が軽減される。
併せて、市の公式WebサイトにFAQ(よくある質問)の検索サイト「ふじまど」も新たに開設した。市に多く寄せられる質問と回答が閲覧できる。FAQで疑問が解決しない場合は、電話やメール、チャットを通じてオペレーターに問い合わせができる。
同センター開設後、市民から寄せられる1カ月あたりの問い合わせ件数は、着実に減っているという。開設前の2023年9月は約2万1000件あった問い合わせが、開設後の24年9月は1万8000件と14%減少。主に、電話による問い合わせが減っているという。
オペレーターから市職員に取り次がれる電話の件数も3割減り、オペレーターの一次対応で解決できるケースが増えているという。市民にとっての利便性向上や、市職員の負担軽減の効果が着実に表れているようだ。
コンタクトセンター開設の効果は、ほかにもある。デジタルプラットフォームを構築したことで、どんな問い合わせが入り、誰がどのように対応し解決したか――といった一連のプロセスが可視化されるようになった。
さらに、問い合わせ内容がプラットフォーム上にナレッジとして蓄積され、FAQの充実につながっていく。対応できる職員の属人化を防ぎ、業務のブラックボックス化も防げるため、対応漏れなどのリスクを軽減できる。
「ナレッジが増加→FAQが充実→電話問い合わせが減少→職員の負担が減る」――という循環サイクルを回していくことで、市民サービスの質を高めるとともに、職場の業務改善にもつながっていく。現在は、回りつつあるサイクルをより強固にしていくフェーズにあるという。
「ナレッジはビッグデータと認識している。データが増えれば、どういう問い合わせがどういう日に多いのか、今どんなニーズがあるのかなどを予想し、あらかじめ公式Webサイト上に情報を載せておくといった対策や、市の施策展開にも生かせる」と増渕さんは話す。
例えば、市では夏の海開きや、毎年10月に開催される「ふじさわ江の島花火大会」などイベントに関連した問い合わせが多いという。「『海開きっていつ?』と聞いた次の質問は何が多いのか、といったことまで分析できる」(増渕さん)
増渕さんは、自治体に寄せられる問い合わせ対応は「全ての業務の基本」だとし、コンタクトセンターに集約されるデータは、大きな可能性を秘めていると期待を込める。
「データは外部に打って出るためにも活用できるし、内部での検討にも活用できる。この貴重なデータをどう生かしていくか、各方面と協議し、さまざまな施策展開に取り組んでいきたい」
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