確かに、問題が起きるたびに「他責」の発言をする若者が増えている。パワハラと指摘されることを恐れ、強く指導できなくなった上司が増えているせいだ。
「心理的安全性」という言葉の副作用も見逃せない。この表現が世の中に浸透して以来、若者が「何でもいえるようになった」と受け止めはじめた。例えば以下のような調子だ。
「このプロジェクトが失敗したのは、課長の指示があいまいだったからです」
「成長できないのは、会社の教育制度が不十分だからです」
だからこそ、上司は自責思考を持つように指導したくなる。しかし「全て自分が悪い」という考え方は、かえって部下を追い詰めることになる。
無敵論法とは、一見正論に見えて、実は相手を追い詰める言葉や論理のことだ。相手が反論できない仕組みになっている。
「自責思考を持て」という言葉も、使い方を誤ると無敵論法になりやすい。例えば、
「他責にするな。プロジェクトが失敗したのは君の責任だ」
「自責思考を持て。教育制度が不十分と言うけど、自分で学ぼうとする気持ちが大切だ」
このように、全ての原因を部下の努力不足や考え方の問題にすり替えてしまうのだ。マジメな若者ほど自責思考をうのみにするだろう。
「確かに誰かのせいだと考えるのはおかしい」
「自分に問題があるのに、すり替えてはいけない」
しかし、あまりに自責の念にかられるのは問題だし、危険だ。
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