「管理職じゃないし……」視座が低い部下 リーダーシップを育む3つのポイント問いの設定力(1/3 ページ)

» 2024年12月16日 07時00分 公開
[鳥潟幸志ITmedia]

著者プロフィール:鳥潟幸志(とりがた・こうじ)

GLOBIS 学び放題 事業リーダー/グロービス経営大学院教員


 ビジネスパーソンの多くは、「言われたことを全うする」、フォロワーシップの意識を持っていると思います。自身が管理職やリーダー層でない限りは、リーダーシップを身に付ける必要はないのでは? と考えている方も多いかもしれません。

写真はイメージ、ゲッティイメージズより

 しかし、AFTER AI時代(※)に突入した昨今では、全員が意思を持ち、外部環境を的確に捉えながら、自身で判断する組織を作り上げていく必要があります。「これからは一人一人、リーダーシップを磨いていく必要がある」と話すのは、ビジネススクールの運営などを手がけるグロービスで、動画学習サービス「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める鳥潟幸志氏。

 本記事では鳥潟氏の著書『AIが答えを出せない 問いの設定力』をもとに、決断力を磨く3つの視点、意思決定における重要な考え方ついて詳しく解説します。

※本記事では、AI技術が目まぐるしい進化を遂げる現在を「AFTER AI時代」と定義する。

全員に「リーダーシップ」が求められる時代へ

 私はAFTER AI時代で求められるスキルは「問いの設定力」「決める力」「リーダーシップ」の3つだと考えます。第2回第3回では、「問いの設定力」「決める力」についてご紹介してきました。今回は「リーダーシップ」について解説します。

 BEFORE AI時代、経営トップやマネジメント層以外の多くの社会人には「リーダーシップ」よりも、組織の指示に従いリーダーを支援する「フォロワーシップ」が重要視されてきました。もちろん、AFTER AI時代においても、今後も人と人が協調して仕事を進める以上、この模範的フォロワーのような素質は重要であり続けるでしょう。

 しかし私は、AFTER AI時代においては、マネジメント層以外の全ての社会人にも「リーダーシップ」が求められてくると考えています。この背景には2つの理由があります。

(1)中央集権型から、自律分散型への変化

 一部の上司が権限を全て掌握する中央集権型の組織から、現場に権限を委譲した自律分散型の組織へ、組織の在り方は変化しつつあります。

 市場や顧客の変化は、近年より大きく、より早くなっています。たとえその業界での経験が長い人でも、今後どのように変化するか、予測するのは難しいでしょう。また、想像もつかないプレーヤーが、競合として台頭してくる可能性もあります。

 そんな変化の中では、市場をもっとも理解している現場に権限が委ねられること、つまり、現場が判断して方向を示し、周囲を動かせる状態であることが重要です。そのため、現場のメンバーも含む、組織の全員が意思を持ち、リーダーシップを発揮する必要があるのです。

組織のパラダイムシフト(出典:『AIが答えを出せない 問いの設定力』より)

(2)人は、AIよりも魅力あるリーダーに従いたいと考えるから

 予測や計算可能な内容についてはAIの方が得意であり、その結論に人は疑いなく従うでしょう。従った方が、効率的でありコスト削減が可能だからです。

 しかし、予測不可能でリスクを伴う方針については、AIがロジカルに導き出す選択肢よりも、信頼のおける人が出す方針に従いたいと思うのではないか。これは、私が日々の実務で生成AIを活用したり、周囲の仲間と議論を重ねたりする中で感じていることです。

 リスクを伴う方針はその後の実践が重要です。信頼のおける人が出した方針であれば、仮にそれが違っていたとしても、方針を出した人が責任を持って最後までやり遂げる期待を持てるでしょう。

 このことは、私自身も日々の仕事の中で実感しています。現場スタッフが強い問題意識と思いを持って小さなプロジェクトを立ち上げて、それを周囲が応援する。そして気が付くと、 組織全体を巻き込む大きな動きにつながっていることが多々あります。年齢も若く、役職や権限もないスタッフになぜこのような動きが可能なのかと言えば、その人の持つ思いやコミットメント、責任感のようなものが他者に伝播(でんぱ)して協力を引き出しているからではないでしょうか。

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