このランドセルの特徴は、ランドセルのパーツのみで甲冑のような形状を再現していること。カブセの部分は、量産時に出る端切れを1枚ずつつなぎ合わせることで、甲冑のようなデザインにしたそうです。
大マチ(幅のこと)部分は異なる革を組み合わせることで模様をつくり、下部には“にらみを効かせた顔”を左右につくって、より本物らしく見せています。つまり、形と色だけで、甲冑のように見せたランドセルといえます。
開発のきっかけについて、ランドセル職人の岡田憲樹さんに聞きました。
「ランドセルをつくる際に、コードバン(馬のお尻部分の皮のこと)を使っているのですが、どうしても端切れが出てしまうんですよね。その端切れを使って財布などをつくってきましたが、それでもどうしても余ってしまう。
以前から『なんとかこれを使うことはできないか』と考えていたところ、たまたまネットで甲冑の写真を見たんですよね。そのとき『端切れを使えば、甲冑デザインのランドセルができるのでは』とひらめき、開発を進めました」とのこと。
とはいえ、職人の岡田さんでも、甲冑ランドセルは一筋縄ではいきませんでした。本物の甲冑は、小札(こざね:甲冑に使われる小さな金属や革の板のこと)を糸で縫い付けていますが、コストと手間がどうしてもかかってしまう。岡田さんは「糸で縫うのは現実的ではない」と考え、ランドセルで使っている「鋲(びょう)」を採用しました。
甲冑ランドセルは複雑な形状ですが、開発期間は2〜3カ月ほど。普段つくっている同社の商品「匠ランドセル」をベースにしているので、それほど時間がかからなかったそうです。
村瀬鞄行はこれまでにも、さまざまなコンテストに出品してきました。2022年、同アワードで「浮世鞄-富嶽-」(50万円)が特選に選ばれました。この作品は非売品でしたが、消費者から「欲しい!」「販売しないの?」といった声が多く、2024年10月に甲冑ランドセルと同時に販売しました。
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