産業界で相次ぐ人事制度改定は、シニア層の活性化策を講じる一方、若年層に対しても新たな労働環境を与える施策を打ち出しています。特に目立つのは、キャリア形成を会社主導にせず、社員自身が決めていく「キャリア自律」の施策です。
冒頭の日経新聞調査によれば、社員が就きたい職種や職務を申請する「自己申告制度」がある企業は70.5%。2018年時点より5.8ポイント上昇しています。また、自発的な異動を実現するための「社内公募(FA制度)」がある企業も、同14.1ポイント上昇の62.8%となっているのです。
大手商社の三菱商事では、公募制度だけでなく社員が自分の意思で希望する部署に自己推薦で異動を願い出られる制度をスタートさせています。2023年度は47人がこの制度で異動したとのこと。また、全業務量の15%までなら本業と異なる業務を担当できる「デュアルキャリア制度」も運用済みです。これも基本は自己申告によるものであり、多様なキャリアを自発的に身に付けることを通じて、社員のモチベーション向上を狙っているわけです。ちなみに先の調査で、社内副業については約2割の企業が導入済みと答えています。
先に紹介した新人事制度をスタートさせた日本ガイシでも、他部門の募集に自らの意思で応募できる社内公募制度の対象を全基幹職に拡大するとともに、部門ごとの職務内容に必要なスキルを記載したジョブディスクリプションを開示。応募の活発化を後押ししています。
さらに、他部門からの直接スカウトに対して自身の意思で応募できる社内スカウト制度も新設し、人事担当役員は「会社としては適材適所を進めつつ、社員自身はキャリアを広い視点で検討できる」とその狙いを話しています。
ヤマハ発動機の新人事制度では「個人が目指すキャリア、チャレンジの実現」を掲げています。具体的には、個人の強みを生かした自律的なキャリア形成を目標に「役割を越えたチャレンジに取り組む行動や結果を評価すること」「職位の在級年数の廃止や飛び級導入などにより人事運用の柔軟化を図ること」などを通じて、社員の適性や志向を生かした自律的なキャリア形成を後押しするようです。
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