これまで暗号資産は、投機的な取引の対象か、せいぜいトレーディングの手段として見られてきた。値上がり益を狙って短期売買を繰り返すものという印象が強く、長期保有する資産として考える人は少なかった。実際、暗号資産取引所の多くは、売買手数料を主な収益源としている。
暗号資産を取り巻く環境は、世界的に大きく変化している。米国では1月にビットコインのETF(上場投資信託)が承認され、3月にはイーサリアムのETFも認可された。機関投資家の参入が本格化し、暗号資産の「金融商品化」が着実に進んでいる。米国では、暗号資産は得体の知れない投資先ではなく、急上昇を続けてきたトラックレコードを持つ資産へと認識が変化してきた。
今回のイーサリアムステーキングを活用したポイント還元は、国内でも暗号資産に対する認識を大きく変える可能性を秘めている。持っているだけで、毎月ポイントが入ってくる――。これは多くの人々になじみのある定期預金や株式配当に似た体験だ。みんな高金利の銀行預金が大好きだし、投資家も高配当を好む人は多い。毎月定期的に収入が入ってくる安心感は、投資家だけでなく多くの人が求めているものだ。
3%という数字は、高配当銘柄ほどの高利回りではないが、高成長銘柄としては非常に高い。イーサリアムは過去5年の平均で年率90%を超えるリターンを叩き出してきており、高成長かつ安定的に配当(のようなもの)が得られる資産だと考えると魅力的だ。新たな資産として認識されるようになれば、保守的な投資家の参入も見込まれるだろう。
「売上金でイーサリアムを買ったはずなのに、もらったポイントでお買い物ができてしまうので減らない」。メルコインの中村CEOは、こうした新しい体験を通じて多くのユーザーが魅力を感じるだろうと話す。暗号資産で得た収益をメルカリでの買い物に活用する、新しい資産活用の形が定着するかもしれない。
一方で日本では、メルカリが暗号資産の難しさを丁寧に隠すことで、ライトユーザーの取り込みに成功してきた。サービス開始から1年9カ月で、口座数は300万を超え、その86%が暗号資産取引が初めてのユーザーだという。かつて投機の対象とされた暗号資産が、定期的な収益を生む身近な資産として、より広く受け入れられる時代が始まろうとしている。
金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
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