教育の原理原則の2つ目が「全員経営を実現する」です。
先ほどのある国の事例は現場のモチベーションの課題解決でもあり、全員経営の実現のためでもあります。
働いている人のモチベーションが低くては、「全員経営」は到底実現できません。
この原理原則があることで、一人一人のやる気を引き出し、一人一人の未来を開くことを教育担当は意識することになります。
「教育」は、企業によって持つ意味が全く変わります。ピラミッド型の組織を意識して育てるのと、一人一人に経営者マインドを持たせるように育てるのでは、アプローチが全く異なります。ユニクロは典型的な後者ですので、私たちも「自分の頭で考えること」を店舗スタッフに至るまで徹底して求めていました。
「言われたことだけやる人にならないでください」「マニュアルよりも原理原則を大事にしてください」と繰り返しました。極論を語れば、「原理原則をしっかり守っていたらあとは何をやってもいいです」と言ったこともあります。実際、守るところだけ守れば自分で考えて何をやってもいいわけです。これも日本企業では特殊な教育といえます。
最後に「グローバルで良い取り組みの事例(ベストプラクティス)を共有して、グローバルで首尾一貫した高品質の教育を実践する」です。これは、情報を囲わずにどんどん良い事例を共有しようという意識を忘れないための原理原則です。
ユニクロの教育体制がグローバルで整備されたのはここ10年くらいで、私が2012年に入社した後です。
今はFRMICが統括していますが、かつては各国の事業部の下に教育機関がぶら下がっていました。ただ、それぞれはあまり横連携していませんでした。国単位で教育が完結していたのです。
ですから、世界中で同じようなことに取り組んでいても、プログラムの中身もばらばらでした。そのプロセスも結果もほとんど共有していませんでした。
例えば、中国で良い取り組みをやっていたのですが、中国国内で閉じていました。「それはもったいない」ということで、FRMICが国ごとのいいとこ取りをして、全体の底上げを図りました。
結果として世界中どこに行っても、共通の理念で共通の必要な力が身につくようなプログラムとその実行体制を整えました。まさにグローバルワンの実践です。
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