パートナー営業で成果を上げるためのポイントは、「情」ではなく「理」である。つまり、パートナーにとっての報酬メリットの合理化、パートナー関係の論理を窓口の方と合意し、握れているかが最重要となる。露骨だが、報酬メリットが合わないならパートナーにとっては扱う理由がないのだ。
このパートナーを動かす報酬の論理は、ビクター・ブルームが提唱した仕事のモチベーション研究理論の基礎である「ブルームの期待理論」に基づき整理ができる。そもそも仕事においてモチベーションが上がる状態とは何か、分かりやすい方程式であらわしている。
ブルーム氏によると、仕事のモチベーションは「(1)期待(成功の見込み)×(2)道具性(報酬の魅力)×(3)誘意性(報酬の確実性)」の掛け算であるという。モチベーションを刺激する3つの変数。これをコミュニケーションでいかに押さえられるかが重要だ。
まさにパートナーを動かす成功の方程式。さて、パートナー営業における先方のモチベーションを考えてみよう。
「期待(成功の見込み)」とは、この取り組みがどれだけ成功のイメージが湧くのかという話だ。「成功の期待感」が仕事のモチベーションになる。読者の皆さんも、うまくいきそうな期待感で心動かされることはあるのではないだろうか。
パートナーにおいては、「ベンダーの製品を代理販売するという取り組み自体がうまくいくイメージがあるのか」というロジックやイメージが重要となる。ぜひ、パートナー企業には「この製品はすごく売れそうだ」「提案したら顧客が喜びそう」「毎月〇件は受注できそうだ」などと言葉にし合って、期待感を持ってもらおう。
「道具性(報酬の魅力)」とは、うまくいった場合の報酬やメリットを具体的にしたときに、うれしいかどうかだ。パートナー側がうれしい報酬体系になっているだろうか。
「この製品が〇円売れるということは代理店報酬でいくらもうけになるから、売り上げは130%増になる。この製品が扱えていれば××の専門性がつき、競合にリードできる」――このように、報酬自体がモチベーションを高める最大の魅力になる。
「誘意性(報酬の確実性)」とは、この成功の見込みや魅力に対して、現実的に形になる可能性の高さである。いくらうまそうな話であっても、現実的に形にできなければパートナー取引は進まない。
パートナー企業はスケジュール、動き方、人の巻き込み方、必要な学習……これらを逆算して考える。「コスパが良さそう」などと思わせられたら、パートナーのモチベーションは高くなるのだ。
この3つの軸に沿って、パートナー企業のメリットを言葉にし、ロジックを組む。パートナー企業とは、言葉にしたものを共有し、双方向で議論し、共通認識をすり合わせる。
パートナーには何度も自社の提案を見直してもらい、いつまでに何をするのかを約束。パートナーの脳内に3つの変数からなる方程式を残して、解きほぐすのだ。これがパートナー営業を成功に導く合理的なアクションである。
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