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LINEヤフーは2024年12月、フルリモート勤務を廃止すると発表した。2025年4月から原則として事業部門は週1回、開発部門を含むコーポレート部門は月1回の出社を求める形に制度を変更する。
同社は2023年10月、LINEとヤフー、Zホールディングス、Z Entertainment、Zデータが合併する形で発足した。LINEヤフーが掲げているのが収益力とプロダクト創出力の向上だ。プロダクト創出力を高めるべくカンパニー制を採用。機動力と柔軟性を向上させた結果、合併後1年で100件以上の新サービス・新機能、改善機能をリリースした。この背景には組織を的確に融合させてきた過程がある。適切なチームビルディングが実を結んできたのだ。今回の出社日を設ける取り組みにも、プロダクト創出力を高める狙いがある。
LINEヤフーは今後、好調なLINE公式アカウントや、LINEミニアプリなどを充実させ、企業のDXやCX(カスタマーエクスペリエンス)向上を支援することによってマネタイズ強化に取り組む。LINEギフトやLINEのリニューアルによって取扱高も拡大していく方針だ。PayPayとのサービス連携により金融事業の成長も加速させていく。
フルリモート廃止の真意や統合後のシナジーなどを、LINEヤフー社長に聞く「C2C向けAIエージェント」の展望 生成AI導入はどこまで進んだ?に続き、出澤剛社長に聞いた。
――eコマースの分野ではLINEとヤフーが一つになったシナジーが、どのように発揮されていますか。
まずLINEとヤフーのeコマースのシナジーからお話しします。1つ目はLINEギフトの取扱高が前年比約30%の成長をしていることです。LINEギフトは統合前から長く展開しているのですが、これは経営統合後に非常に伸びたサービスなのです。
この要因として、LINEギフトのチームとヤフーショッピングのチームが一緒になったことで、扱う在庫の拡大や、商圏の吸収がしっかりできたからだと評価しています。ここは一つの分かりやすいシナジーの例だと思います。
もう一つ、これから始まるところで言うと、LINEのタブの中からショッピングのコーナーができます。ここは海外のチャットアプリの先例でも、とても多くのユーザーが購買している場所になります。このサービスも今、LINEギフトとヤフーショッピングが一緒になったコマースのチームが鋭意、企画をしてくれています。
ただ単にLINEのタブの中にヤフーショッピングがあっても(消費者は)使わないと思います。そうではなく、LINEでのコミュニケーションのついでにちょっと見て、いいなと思うような売り場作りを考えてテストしているところです。ここは今後の新しいシナジーとして大いに期待しています。
さらに2024年12月には、越境EC事業者BEENOSのTOB(株式公開買付け)を発表しました。オークションやフリマなどのC2C国内市場の成長は緩やかになってきた状況です。こうした中、日本の商品を海外に売る越境のC2Cが、非常に伸びています。
円安基調もあり、日本のアニメ・ゲームのグッズや、国産ブランドの時計やお酒が海外で人気です。これは今後ますます伸びると思いますので、成長する可能性が高いと思っています。リユース事業全体で見ても、まだまだ成長余地があると思います。
BEENOSのメイン市場は米国ですが、台湾でも強い市場を持っています。越境EC事業は、前年比約30%伸びており、日本から米国だとナンバーワンです。一方、日本から台湾ではまだナンバーワンではないところもあります。
対してLINEは、台湾やタイでも好調です。これらの国に対して越境C2Cサービスを、LINEを活用してさらに伸ばしていくこと。これは、新しいシナジーの形として非常に期待しているところです。そういった意味でギフト、オークション、リユースといったコマース全てにおいて、シナジーが発露しつつある状況だと思います。
――シナジーを生み出すのは簡単ではなかったと思います。チームビルディングを含め、何が奏功したのでしょうか。
まずコマースのケースでいうと、非常に早い段階で組織の融合ができた点があります。2023年10月の合併時点から、同じことを展開している事業は一緒のカンパニーになりました。それぞれの責任者同士が腹を割って話せるような環境を作り、そこから拍車が掛かっっていった印象です。
――2024年12月には、従来の「フルリモートOK」から、2025年4月以降「原則月1回以上の出社」へと働き方の方針変更を発表しました。ここも合併の影響があるのでしょうか。
旧ヤフーも旧LINEも、ハイブリッドワークを推奨してきました。ただ皆さん、リモートの良さは理解しているものの、一方でリモートに寄りすぎている現状もあります。やはり顔を突き合わせて働くことの良さも体感されているはずです。そこをバランスよく、新しい形でのハイブリッドワークを定義しようという考えから、出社日を設ける形で展開していこうということで発表しました。
――反響も多くあったと思います。
説明をしつつ社員の皆さんの意見も聞いている状況で、しっかり展開していこうと思います。生活に影響が出る点などは、いろいろな意見を聞きながら対策を考えて進めていきます。
ただ、難易度の高い課題に取り組む時や、新しいアイデアを創発する時、教育の面では、やはり対面の方が有効だと思います。ですので、出社日を設ける方向で考えています。
――出社率が上がることによって、LINEとヤフーが統合したシナジーがさらに出る可能性もありますよね。
そうですね。われわれは今、統合会社で新しい文化を作ったりシナジーを出したりするタイミングにあります。そういう意味ではコミュニケーションが重要な局面にあると考えています。
――LINE公式アカウントの広告売上高が1000億円を超え、ミニアプリも好調です。今後の伸びしろについては、どう考えていますか。
公式アカウントの伸び率は常に堅調です。市場全体では今、ディスプレイ広告の成長率が厳しい中、着実に伸び続けています。
日本でも居酒屋や美容院などに行くと、LINEを通じたサービスを目にする機会が増えたと思います。有償のLINE公式アカウント数は、国内で25万を超えました。
このサービスにハンズオンで立ち上げから関わってきた身としては、非常によく成長してきたと実感しています。さらにここから、ミニアプリを通じてプラットフォームになっていくところに大きな可能性があると思っています。
美容院に行くと次回の来店予約をLINEで取っていたり、ポイントカードをLINEで展開していたり、飲食店のテーブルオーダーや順番待ちを、LINEミニアプリによって提供していたりすることが増えてきています。店舗側からすると、一からアプリを作って、それを顧客にダウンロードさせるのは手間ですし、顧客体験(CX)の点からも良くありません。
その点で、普段利用しているLINE上ですぐに使えるミニアプリは、非常に好評です。ミニアプリの月間利用者数も1000万人を超えてきており、非常に大きなユーザーニーズがあります。
今後は飲食店や美容院といった小売店のミニアプリ上で、コンテンツなどへの課金展開も考えています。既に中国では非常に成功している他社の事例があり、とても大きなエコシステムを作っています。LINEミニアプリもそういったスケール感やイメージで展開していきたいと思います。
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