スカイスキャナージャパン株式会社 トラベルエキスパート
東京生まれ、グアム育ち。スカイスキャナーの数少ないトレーニングを受けたトラベルエキスパートの一人。トラベルエキスパートとして、スカイスキャナーのデータに基づいた旅行トレンドを分析し、日本市場に向けて関連する旅行情報・役立つヒントの提供に従事。
また、APAC地域全体でスカイスキャナーのオフィスとそのスタッフをサポートするため、快適な職場環境を構築することに専念するシニアワークプレイスマネージャーも兼任。プライベートでは一児の母として、仕事と家庭の両立に励んでいる。
ちなみに一番お気に入りの旅行ハックは、スカイスキャナーの「カレンダー・チャット」機能を使って航空運賃が安い日を素早くチェックしてから旅行計画を立てること
コロナや円安による影響で海外旅行を中心に落ち込んでいた旅行業界ですが、ここにきて復活の兆しが見え始めています。法務省出入国在留管理庁のデータによると、2024年8月時点の日本人出国者数は前年同月比で19.7%増と、日本から海外への出国者数は着実に増加していることが分かります。
スカイスキャナーが2023年7月に日本人1000人を対象に実施した最新調査でもこの傾向はみられており、約4人に1人の日本人が、「航空券によりお金をかけたい」と回答しました。この結果から、厳しい社会情勢の中でも旅行に対してお金を費やしていきたい、余暇の中でも旅行を重視している生活者が多いことが分かります。
旅行需要が高まる中で、旅行者のインサイトとしても1つの傾向が見えるようになってきました。それは「ニーズがますます多様化・細分化」してきたということです。2024年10月に発表した「トラベルトレンドレポート 2025」では、“2025年は大きく7つの分野における旅行体験が重視される”といった調査結果・考察を出しました。
そこではスポーツ観戦や現地でサイクリングをするといったアクティブな旅行を楽しみたい層もいれば、リセットするために旅行を活用したい層もみられるなど、トピックスは多岐にわたる結果となりました。また、それぞれ同じ趣向を持った人々同士でコミュニティーを作り、一緒の体験を共有していきたい、という意向があることも分かっており、よりニーズは複雑になっていくことが予想されます。
ニーズが多様化・細分化している現代では、旅行者が自分に合った最適なプラン組みを行うことは今まで以上に工数がかかるものになってきていると考えています。こうした社会的な背景もあり、今、急速に旅行業界で導入が進められているのがAIです。スカイスキャナーが実施した調査でも、アジア太平洋地域の旅行者の46%が2025年は旅行計画にAIを活用してみたいと回答しており、事実として旅行者からAIに対する需要が高まっていることが分かります。
私たちスカイスキャナーも例外ではなく、AIの導入を推進しております。例えば旅行先の提案やフライト、ホテルのランキング表示など、お客さまの旅行計画をサポートするさまざまなシーンにてAIを搭載しています。特にスカイスキャナーはメタサーチの領域におけるサービスであるため、利用者の半数がどの旅行先に行くかどうかをまだ決めていない段階でサイト/アプリに訪れています。
こうした段階でもそれぞれの旅行者にとって最適なインスピレーションを与えることができるよう、スカイスキャナーでは旅行者の行動や季節、検索ボリュームの推移や出発地などのデータを分析する数十種類の機械学習モデルを開発いたしました。
これにより、従来のフライトやホテルのランキングは、手作業でコーディングされたアルゴリズムに基づいて表示していたところを高度なニューラルネットワークを活用し、数百もの変数を考慮した「マルチアームバンディット」と呼ばれる機械学習モデルでユーザー一人一人に最適な旅行先を提案できるようになりました。
加えて、近年の社会情勢も相まって計画の際に最も旅行者が意識するポイントの一つに「コスト」が挙げられるようになりました。しかし、多くのLCCやホテルの比較サイトなどの台頭により、いまだかつてないほど旅行における選択肢は多岐にわたり、複雑化してきています。スカイスキャナーでは“旅行者ファースト”を心掛けているため、こうした中でもシンプルかつ正確なプランが提供できるような機能を開発しました。
希望する日程や目的地への価格の変動をリアルタイムでウォッチ、変動したタイミングで通知を送る「プライスアラート機能」と、対象区間の航空券価格を一覧で見ることができる「カレンダー/チャート表示機能」です。
さらに旅行者に革新的な旅行体験を提供するため、AIを活用した「Vibes機能」を展開しています。Vibes機能はスカイスキャナー上の「全ての場所から探す」機能の中に組み込まれたフィルターで、旅行先の候補を雰囲気で自動的に分類し、ユーザーの好みに合わせて提示いたします。例えば「ビーチ沿いの夜景が美しい場所」や「歴史を感じる街並み」といった形でフィルタリングされ、ユーザーは理想の旅行先をより早く見つけられるようになります。
こうした機能のアップデートはユーザーのみならず、提携しているエアライン・ホテルなどのパートナー企業にとっても大きなメリットが生じています。というのもスカイスキャナーは“メタサーチ”というサービスの立ち位置でもあるため、利用する旅行者の約半数はまだ具体的な旅行先や日程が決まっていない状態でサイトを訪れるからです。
大規模な機械学習をリアルタイムで活用することで、ユーザーにとって最も関連性の高い検索結果を表示できるようになり、カスタマージャーニーを簡素化することに成功。実際に旅行者の81%がAIによって提案された上位3つの選択肢から予約を行ったり、クリック率(CTR)が40%向上したりするなどの成果にもつながっています。
その他にもスカイスキャナーでは、持続可能な観光・旅行を提供できるよう、フライトの環境への影響に関する情報提供にも力を入れています。
まずは、CO2排出量の表示です。スカイスキャナーは、検索結果にCO2排出量を表示した最初のフライトメタ検索エンジンの一つです。この分野は常に進化しており、私たちは常に最新の情報を提供できるよう、ユーザーリサーチやレビューを継続的に行っています。
また、昨今の日本ではオーバーツーリズムなどの問題はよく謡われているため、観光客が集中する「ホットスポット」だけでなく、まだ知られていない旅行先を新たに見つけるお手伝いを通じたアプローチもしていきたいと考えています。スカイスキャナーの「全ての場所から探す」機能をより訴求していきたいと考えています。本機能では日程と出発地を設定することで、お得順に旅行先をご紹介し、隠れた魅力を持つ旅行先を見つけられるようにしました。
AI技術は、まさに日進月歩で進化を遂げています。スカイスキャナーは、その進化に大きな期待を寄せていますが、単に技術を導入すること自体が目的ではありません。重要なのは、AI技術をどのように活用すれば、顧客にとって真に役立つサービスを提供できるのか、ということです。
私たちは、ニーズがパーソナライズされていく中においても、旅行をしたいと考えている世界中の旅行者にとってより良いトラベルアプリとして活用いただけるよう、最新のテクノロジーを活用して、旅行における煩雑な要素を簡素化。誠実で透明性のあるソリューションを提供し続けています。
2025年は日本の旅行業界全体としても、変革の年だと考えています。2024年は円安などによりコロナ禍以前の水準も超え、過去最大の訪日観光客となったというデータもあるように、特にインバウンドの旅行が盛り上がったと思います。一方、人気の観光地に旅行者が集中してしまうオーバーツーリズム問題や、日本から海外へのアウトバウンドは、インバウンドほど回復していないなど、いくつか課題も見えてきました。
旅行に関わるさまざまなステークホルダーは「旅行体験を持続可能なものにしていく」といったサステナブルな観点でも旅行を捉えていく必要があると思います。その第一歩に向けた取り組みがどんどん生まれていく年になりそうです。
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