おうちドリンクバーのフレーバーは、「POPメロンソーダ」「C.C.レモン」「デカビタC」といずれも既存商品を踏襲している。おうちドリンクバー用に新しいフレーバーを開発するのではなく、既存商品を活用した理由について、宮内氏は「炭酸水で割って飲むという斬新さと、味への安心感のバランスをとる必要があったから」と説明する。
「濃縮タイプの飲料は人気ですが、知名度はまだそれほど高くない商品です。消費者にとって、なじみのない商品を手に取ることは抵抗があります。その点、POPメロンソーダ、C.C.レモン、デカビタCの3種類はいずれもロングセラー商品で、ほとんどの人が一度は飲んだことがあるかと思います。ロングセラー商品のブランド力を生かし、おうちドリンクバーという新商品への抵抗を減らしたいと考えました」
宮内氏がおうちドリンクバー商品化のアイデアを出したところ、上司を含め社内からは反対の声が大きかったという。当時、サントリーには「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」や「割るだけBOSS CAFE」といった、濃縮タイプのお茶やコーヒーが存在していた。にもかかわらず、なぜ反対されたのだろうか。理由は「手間」にあった。
コーヒーやお茶の場合、飲むためには豆をひいたり、お湯を沸かして茶葉を入れたりという手間がかかる。濃縮タイプの商品はこうした手間を省く利点があった。しかし、おうちドリンクバーはその逆で、わざわざ炭酸水で割るという手間が発生する。すでに完成された炭酸飲料が売られている中で、飲むまでにひと手間かかるおうちドリンクバーは何がウリになるのか。上司からそう尋ねられたという。
そこで宮内氏が例に出したのが「タコパ」、つまりたこ焼きパーティーだ。味のことを考えれば、専門店の商品を買う方がいい。しかし、家族や友人が集まってたこ焼き器を囲み、ワイワイしながら作ることは楽しい。「タコパを例に出し、おうちドリンクバーは『非合理的だけど情緒的』であるという点がウリであると何度も説明し、社内を説得しました」(宮内氏)
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