新時代セールスの教科書

「営業とマーケの仲が悪い」企業必見 効率化・受注率UPにつながる“ある解決法”具体例も紹介

» 2025年01月31日 07時00分 公開
[大村康雄ITmedia]

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大村康雄

株式会社エッジコネクション代表取締役社長


 営業部門の効率性を高めたいと考えている多くの企業では、担当者の負担が偏る部署間連携がスムーズにいかないなどの課題を抱えています。特に営業とマーケティングの部門間連携は、双方で異なるKPIを追っていることなどが原因で円滑に進まないケースが多く、「営業とマーケは仲が悪い」という悩みも多く聞かれます。そういった中、顧客提案や業績分析といった付加業務が多い営業担当者が、本来の営業活動に十分な時間を割けないケースが散見されます。

 筆者は、このような課題に対応するには「社内発注制度」が効果的だと考えています。本コラムでは、社内発注がどのように営業効率化を実現するのか、その具体例を交えて解説します。

「社内発注」とは? 実際に営業部で活用する方法

 社内発注とは、企業内の部署間で業務を発注・受注し合う仕組みを指します。この取り組みは、部署間の透明性を高め、責任を明確にすることで、生産性を向上させる大きな可能性を秘めています。

 従来、企業内の部署間では「お互いに協力して当然」という暗黙の了解のもとで業務が進められてきました。しかし、このアプローチでは「頼む側」と「頼まれる側」の業務負担や貢献度が曖昧(あいまい)になりがちです。その結果、モチベーションの低下や不公平感が生じ、最終的に生産性が低下するケースも見られます。

(写真はイメージ、ゲッティイメージズより)

 一方、社内発注を導入することで、部署間の業務が可視化されます。具体的には、依頼内容や成果物が明確になり、その対価が金銭やリソースとして示されるため、部署間での公平な関係が築かれます。このような仕組みは、外部取引における発注と同様の原則を社内に適用するものです。

 例えば、ある企業では、営業部がマーケティング部門に依頼する際、「マーケティングからのリード提供1件あたり○円」という社内発注価格が設定されました。これにより、マーケティング部門は自部門の売り上げを上げるために、よりたくさんのリードを営業部門にパスしたいというインセンティブが生まれます。

 一方で営業部門が、質の低いリードに対して自部門の売り上げが支払われるのは避けたいと考えるのは当然です。よって、リードとして受け取るものは最低このような情報が必要であるという定義付けを行いました。その結果、この施策により質の良いリードがたくさん営業部門に提供されるようになったといいます。

営業部での社内発注をうまく活用! 事例4選

 その他、営業部とその周辺部門で社内発注を活用する具体的な方法として、以下の事例が挙げられます。

1.案件獲得とサービス提供の分業による効率化

 営業部が新規案件を獲得した際、契約金額の一部をサービス提供部門に社内発注として支払う仕組みを導入します。この方法により、営業部は案件の獲得に集中でき、サービス提供部門はクオリティー向上に専念する体制を構築できます。

 例えば、営業部が100万円の契約を結び、そのうち50万円を提供部門に発注すると、双方が明確な役割分担のもとで成果を出しやすくなります。

2.顧客提案資料の作成を専門部門へ依頼

 営業部が顧客向けの提案資料を作成する際、デザイン部門やマーケティング部門に社内発注として依頼する仕組みを活用します。これにより、資料作成に要する時間を削減し、営業活動に集中できます。

 また、依頼先がプロフェッショナルであるため、提案内容のクオリティーが向上し、受注率の向上が期待できます。

3.データ分析のアウトソーシング

 営業部の業績分析や市場調査をデータ解析部門に依頼し、適切なフィーを支払います。これにより、営業担当者はデータ収集や分析に時間を取られることなく、効率的に営業戦略を立案できます。

 例えば、売り上げ分析を依頼し、顧客セグメントごとの効果的なアプローチを立案することで、受注率を10%向上させた事例もあります。

4.顧客フォロー業務のアウトソーシング

 契約後のアフターフォローをサポート部門に発注し、営業担当者が新規顧客の獲得に集中できる環境を作ります。この取り組みにより、顧客満足度の向上と新規営業の成果を両立させることができます。

 例えば、フォロー業務を依頼することで、営業の訪問回数を1.5倍に増やした例もあります。

まとめ

 社内発注を導入することで、以下のような効果が期待されます。

  • 効率性の向上:営業部が本来の業務に集中することで、生産性が飛躍的に向上します。
  • 業務の可視化:社内発注により、各業務のコストや貢献度が明確になり、改善ポイントが見つけやすくなります。
  • チーム間連携の強化:部署間で金銭の流れを伴うため、責任感が生まれ、連携がスムーズになります。

 社内発注は、単なる業務効率化の手法ではなく、部署間の信頼関係を強化し、企業全体の生産性を向上させる革新的な仕組みです。特に営業部門での活用は、成約率や顧客満足度の向上に直結するため、優先的に検討すべき分野といえます。

 営業部門とマーケティング部門の“不仲問題”に悩む企業は多いかと思いますので、ぜひ「社内発注制度」を活用し、業務の効率化に取り組んでみてください。

大村康雄

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慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、米系金融機関であるシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、現在は人事・財務課題も対応する「営業・人事・財務課題伴走型支援企業」として展開。経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオ・YouTube・コラムなど、各種メディアで発信中。

これまでに1500社以上を支援し、継続顧客割合は平均75%台。地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。2024年7月、「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。

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