前述の通り、グローバル市場で見ると、スタバの調子が良いのは日本だけである。同社の米国事業や中国事業は大きく落ち込んでおり2024年10〜12月期決算の既存店売上高は全世界で前年同期比4%減となった。米国では4%減、中国では6%減である。どうして日本だけここまで好調が続くのだろうか。さまざまな要因があるだろうが、おそらく、ここにも先ほど書いた「ブランディング」の問題が潜んでいると思う。
特に米国で問題になっているのは、モバイルオーダー注文での不備の多さだという。モバイルオーダーが殺到しすぎて、店舗でさばききれなくなった結果、注文から商品の受け取りまでに10分以上かかるケースもあるのだという。
これは推測だが、モバイルオーダーによって注文プロセスが「民主化」された可能性がある。口頭での注文で「呪文」に煩わされることなく注文ができるために、逆にスタバに行くハードルが下がった可能性が高い。それが結果として店のクオリティーを下げ、ブランディングも下げてしまい減益に……という流れが想像できる。
また、米国ではスタバのライバルは「ファストフード」だともされており、マクドナルドなどとの価格競争も起こっている。そうなるとやはりスタバが目指していたような「ブランディング」とは程遠い世界になってしまう。日本の場合、モバイルオーダーがまだそれほど浸透していないこと、さらに値下げなどは一部を除きほぼ行っていないことが結果的に「ブランドの維持」に寄与したのかもしれない。
このようにしてみると、日本でのスタバは、むしろ本国である米国以上にブランディングの強化に務めているといえる。日本はよく「マニュアル文化」だといわれることが多いが、本国のスタバが守ってきたことを日本なりに解釈し、忠実に守ってきているからこそ、ここまで堅実だといえるのかもしれない。
また、日本ではいまだに「外国文化への憧れ」が根強い部分もある。それはスタバがブランディングとする「カッコよさ」に表れているが、スタバに行くこと自体がまだ個人のアイデンティティーを形成する1つの要因になっている。
ひところまことしやかに語られた「スタバでMacBookポチポチドヤァ問題」は、まさにそれを表しているだろう。スタバでMacBookを開きドヤ顔で仕事をすることが、その人の印象を決めるのである。なお、現在ではそこまでドヤってる人はいないが、それでもこのイメージがいまだ強いことにも、日本におけるスタバのブランディングの強さがうかがえるのだ。
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