一方、コメダ珈琲は、あらゆる点でスタバとは異なる特徴を持っている。まず、コメダはその店舗の多くはフランチャイズである。つまり、それぞれの店舗ごとにオーナーが違う。その意味で、スタバのような全店で敷居を高くするブランディングが施されているわけではない。
カフェ業界での取材が長い高井尚之氏は著書『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(プレジデント社)で、スタバと比較したときコメダは「かっこつけないところ」が特徴だと書いている。こうした運営形態の在り方も、その雰囲気に影響を及ぼしているかもしれない。
面白いのは、同書では「なぜ、コメダには『舌をかみそうなメニューがない』のか?」と題して、同社のメニューがシンプルであることに触れつつ「子どもからお年寄りまで、世代を問わず来店される店にするためには、利用客の抵抗感を和らげる工夫も必要だ。それが、メニューのネーミングにも表れている」と述べる。あらゆる来店ハードルを下げることで、スタバと好対照を成していることがお分かりいただけるだろう。
さらにこうした「かっこつけないところ」は、店舗に長居できることにも表れている。コメダ珈琲店では一部店舗を除き、基本的には利用時間の制限がない。肩肘張らないで、長くいることができるのだ。電源付きのテーブルも多く、テーブルもゆったりしている。さらに各テーブルの横には少し高めの間仕切りがあって、そこまで周りの目を気にすることなくおしゃべりや作業ができる。地元民の憩いの場所になっているコメダも多い。
そういえばかつて、ある記者の人と話していたとき「その地域の飾り気のない姿を見たければ、そこのコメダに行け」と言われた。コメダでダベる近所の人たちの会話が、もっともその地域の姿を表すというのだ。
ちなみにコメダ珈琲店ではその分、営業時間を他のカフェチェーンよりも長く取り、モーニング、ランチ、ディナーで違うお客を入れて利益を上げている。また、長居する客の多くがコーヒーや食事のお替わりをすることもあって、客単価の向上に成功。長居できる裏側にはこうしたビジネス上のカラクリがあるのだ。
いずれにしても、スタバが直営店をメインに「かっこよさ」を重視したブランディングを意識し続けているのに対し、コメダはむしろ「かっこつけない」空間作りを意識している。それぞれのチェーンの特徴はかなり際立っており、その点で両者とも「選ばれる」チェーンになっているのではないだろうか。
突然、普通の街が観光地に! インバウンドが押し寄せる「ニッチ観光地」から考える日本観光のあり方
なぜ百貨店は正月に休むのか 「人手不足」説に隠れた各社の真意
単なる「ブーム」ではない カプセルトイ専門店が爆増する背景にある「コスパ」の正体
「イオンでウォーキングする」文化は流行るのか? 実際に体験して「厳しそう」だと感じたワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング