本来、企業の危機管理における理想的なゴールは「世間から忘れてもらう」ことだ。2〜3日は大騒ぎされてもすぐに飽きられ、誰も語らなくなり、メディアも続報を出さなくなってネット検索でも引っかかりづらくなる。われわれのようなプロはそこを目指している。
しかし、今回のスシローの対応は残念ながらその真逆となっている。これから鶴瓶さんが新CMのイメージキャラクターに起用されるたび、「そういえば昔……」と蒸し返される。有名タレントが不祥事を起こしてCMが契約解除されるたび、「鶴瓶さんのように本人ではないのに削除された例もある」と紹介される。
つまり、ネガティブな話題がダラダラと報じられ続け、ボディブローのように企業イメージを悪くさせているのだ。この対応が得策でないことは、今回の騒動があってからも鶴瓶さんの画像が公式Webサイトに掲載されたままの「伊藤園 健康ミネラルむぎ茶」は誰も叩くこともなく、ネガティブな話題にもなっていないことからも明らかだ。
(3)に関しては、タイミングも悪かった。筆者は1月22日公開の記事『なぜフジテレビは失敗し、アイリスオーヤマは成功したのか 危機対応で見えた「会社の本性」』でも触れたが、この少し前、アイリスオーヤマの「神対応」が称賛されたばかりだからだ。
アイリスオーヤマは、自宅で酩酊して隣室に侵入し、書類送検という「警察沙汰」になった吉沢亮さんをテレビCMに使い続けた。その対応もさることながら、人々が絶賛したのは前代未聞の応援メッセージだ。
吉沢亮さんは、アイリスオーヤマのブランドアンバサダーの一人として、卓越した表現力と幅広い支持層を持つ俳優です。これまで多くのお客さまに当社の魅力を伝えていただきました。その存在感は、ブランド価値の向上にも大きく貢献していただいております。
今回の契約継続は、吉沢亮さんの今後の挑戦を応援し、共に頑張っていきたいという当社の決意を示すものです》(アイリスオーヤマ公式Webサイト 2025年1月14日)
企業にとって「タレントなど認知度や宣伝をするための人寄せパンダに過ぎない」というのが社会の一般的な認識の中で、「共に頑張っていきたい」とまでいってのけたことで、アイリスオーヤマの企業イメージは爆上がりしたというワケだ。
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