社会から叩かれたトラウマがあるので、少しの問題でもすぐに謝罪や撤回、商品やサービスの停止などに踏み切る。スシローもかつて「おとり広告」問題でボロカスに叩かれた。その苦い経験があるので、ちょっとしたリスクも見逃せない。今回のように、ちょっとでもミソが付いた鶴瓶さんをすぐに「排除」したのも、これが理由ではないか。
スシローといえば、「しょうゆ差しペロペロ少年」の問題が起きたとき、6700万円の損害賠償請求をして世間から称賛された。ただ、企業危機管理の世界では、これは「悪手」以外の何者でもない。理由は当時書いた『スシローは「6700万円の損害賠償請求」を止めるべき、3つの理由』を読んでいただきたい。
もちろん、この記事はジャーナリストやら知らない人たちから「少年を訴えないとスシローは株主から訴えられるぞ!」とか「少年と家族は死ぬまで償いをすべきだ!」とボロカスに叩かれたが、そういう次元の話ではないことは、それからほどなくしてスシローが訴えを取り下げたことが、全てを物語っている。
こういう前例のある企業が、今回も「お客さまの意見」を理由に鶴瓶さんを切り捨てるという「過剰な危機管理」に走ったのは、個人的にはかなり納得感がある。
いずれにしても、今回のスシローの対応はいろいろな意味で興味深い。この「過剰防衛」が今後どう企業イメージに影響を及ぼすのか。吉と出るか凶と出るか、今後の動きに注目したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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