KDDIが経理のオペレーション改革にAIを活用し、得た成果とは。従来の業務プロセスから脱却を図る中で直面した課題、失敗と成功、今後の展望を語る。
フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の一連の騒動が、連日取り沙汰されています。1月27日に開かれた記者会見は10時間超えの長丁場となり、同社にはさまざまな厳しい意見が寄せられました。
タレント・中居正広氏のトラブルに会社が関与していたのか、会社の風土として、人権を軽視した文化が存在したのか、トラブル発覚後の会社の対応は適切だったのか、事実上の最高権力者である日枝久氏の進退は……。本問題にはさまざまな論点がありますが、今回の記事ではコンプライアンス室の存在意義に注目したいと思います。
同社は中居氏と被害者女性の間で起きたトラブルを把握した際に、社内のコンプライアンス担当部署と情報共有をしていなかったと明らかにしました(1月27日の会見、フジテレビジョン 港浩一前社長の発言より)。被害者女性の「誰にも知られずに職場復帰したい」という要望を尊重し、このような対応をしたと説明しています。
<参考:フジテレビの「ガバナンス不全」 日枝久氏の「影響力」の本質とは?>
コンプライアンス違反やハラスメント被害が発生した際に、その原因を調査し、解決に導くのがコンプライアンス室の役割です。今回の一連の内容こそ、コンプライアンス室が対応すべき事案でしょう。
しかし、同社はコンプライアンス室への共有をしなかった――。この背景には、日本企業におけるコンプライアンス室の機能不全問題と、従業員の不信感という根深い2つの問題があります。これは、フジテレビに限った話ではありません。
ハラスメント問題やコンプライアンス問題に詳しい佐藤みのり弁護士が解説します。
一部の社員のみで情報をとどめる問題点としては、多角的な視点で問題対応にあたることができないことが大きいと思います。
特に、自社の従業員に対する人権侵害のおそれが発覚した場合、それに対して会社が社会規範に沿った適切な対応をするためには、「法令順守」「社会からの信頼」といった視点も非常に重要になります。問題を把握した一部の社員の中に、そうした視点を持った担当者がいないと、その視点を欠いた状態で対応を進めることになってしまいます。
例えば、限られた視点で対応していると、傷ついて不安定になっている相談者から聴き取ることのできた、限定的な発言などを念頭に、そこに偏った対応を進めがちです。もちろん、被害を相談した従業員の健康へ最大限の配慮をすることや、被害を相談した従業員の希望を尊重することは重要です。しかし、相談者の十分な意思確認ができているか自問し、十分な意思確認をするための方法はないか模索する視点は欠かせません。少なくとも、そうした視点を持ち合わせた人が、対応メンバーに加わることは、相談者に対してより誠実に向き合うことにつながったのではないかと思います。
コンプライアンス室に共有しないことで、フジテレビ側に「中居氏を守る意図」や「隠蔽(いんぺい)の意図」があったのではないかとの疑いが強まってしまったように思います。
実際、会社側にどのような意図があったのかについては、第三者委員会の調査を待つ必要があります。しかし、トラブル対応にあたっては、もしも事が公になったとしたら、会社の対応が社会から信頼されるものかという視点も重要であるように感じます。
世間では、中居氏に対して会社側から聴取を申し入れなかったことや、その後も中居氏の番組を継続させたこと、トラブルを知らなかった番組制作者が中居氏を起用したことなどについても批判の声があがっています。こうした対応が問題といえるかは、相談者側の当時の心身の状況、相談者の希望、それらを踏まえた社内でのあるべき情報共有範囲など、今後、総合的に評価される点だと思います。
相談者の心身の状況を踏まえながら、医師とも相談の上、意思確認の方法を検討し、早期にコンプライアンス室との共有を提案する方法もあったのではないかと思います。
その際、コンプライアンス室の情報管理体制について説明し安心感を与える、コンプライアンス室との情報共有のメリット(多角的視点による対応が可能になるなど)を説明する、相談者の希望によって情報共有範囲を室長のみなどに限定する方法もあると提案するなど、工夫することも大切だったのではないかと考えます。
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