ハワイに100年前から「日本酒醸造所」がある理由 アメリカに“SAKE造り”はこうして根付いた(4/4 ページ)

» 2025年02月15日 09時00分 公開
[高橋理人ITmedia]
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第3段階 現地人による現地人のためのSAKE

 アメリカ人が日本酒・SAKEに出会い、ハマった人たちが飲むだけではなく研究をし、その良さを広め、知ってもらうために自身で酒づくりを始めました。小規模で醸造するので「Craft SAKE(クラフトサケ)」と呼ばれました。

 Craft SAKEの元祖といわれているのが、1997年にオレゴン州に誕生した「SAKE ONE」です(現在は、白鶴のグループ会社です)。当時のアメリカはクラフトビールブームで、オレゴン州ポートランドは「クラフトビールの聖地」と呼ばれていました。クラフト文化の影響を受けて、アメリカの地元を意識した「Craft SAKE」が誕生しました。

 その後、2000年以降に北米からクラフトサケの醸造所が次々に誕生していきます。

 私が実際に足を運んだのは、2015年にカリフォルニア州で立ち上がった「セコイア・サケ」です。まるで秘密基地のような大きな車庫で、創業者のジェイク・マイリックさんがSAKEの醸造を行っています。

 また、米の研究もされていて、カルローズの祖先の渡船に近い「カルル」という品種を選抜し、2020年から本格栽培を行っています。

 Craft SAKE醸造の面白い点は、「杉樽のフレーバーをつけるために杉の棒を酒へ漬け込む」「ホップやボタニカルを使う」など、自由な発想で酒づくりにチャレンジしている点です。国内で生産する日本酒とは違う文脈で造られた、まさに現地人による現地人のためのSAKEです。

 そして、2023年には獺祭の新工場「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」がオープンし、2024年にはWAKAZEが缶のスパークリングSAKE「Summer Fall」でアメリカへ本格挑戦が発表されました。

 このようにアメリカは、SAKE文化が今もっとも熱量の高い国と言えます。SAKEの世界化とローカライズが成功した国として、他の国への展開においても学べる点がたくさんあります。

酒ビジネス 飲むのが好きな人から専門家まで楽しく読める酒の教養

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 日本酒はビールやウイスキー、ワインにも匹敵する、「世界的な飲みもの」になりつつあります。

 例えば、「獺祭 磨き その先へ」という日本酒をご存じでしょうか。

これは2014年に安倍元首相がアメリカのオバマ元大統領に訪日記念としてプ レゼントしたことでも知られる、1本4万円を超える日本酒の銘柄です。

 海外に目を向けると、アメリカの俳優ロバート・デ・ニーロは新潟県の佐渡島の日本酒「北雪」に 惚れ込み、自家用ジェットで買い付けに来たと言われています。

 プロゴルファーのタイガー・ウッズは、不調に苦しんでいた際に薦められた日本酒を飲んでスランプを脱出したそうです。

 上に紹介した以外にも、日本酒は国内に限らず、世界中で酒蔵が生まれる注目のジャンル。

 日本酒は今、「世界の教養」として世界各国から認識されはじめているのです。

 本書では酒蔵コーディネーターとして活躍し、年間2000種類以上の日本酒を呑んできた著者による、「日本酒の教養」としてまとめています。

 この本を読めば、ビジネスから日常の雑談まで、様々なシーンで日本酒について語れること間違いなしです。


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