「任天堂VS.株主」見ている未来は違う? 「スイッチ2」に市場が冷めた理由(5/7 ページ)

» 2025年02月21日 08時00分 公開
[草刈貴弘ITmedia]

ゲーム機を売って終わりではなく、継続的な収益を生む

 バリューアクトが指摘した背景には、ゲーム業界全体が過去10年間で大きく成長する中、任天堂の成長スピードがそれほど速くなかったことも影響しています。

 ニンテンドーDSやWiiの成功の後、ニンテンドー3DSやWii Uが伸び悩んだことで、任天堂の収益構造がゲーム機のヒットに過度に依存していることが明らかになりました。ゲームソフト売り上げの約7割が自社コンテンツに偏っていたことも、成長の鈍化を招いたと考えられます。

 バリューアクトは「優れたコンテンツを持っているのに、なぜこれほど成長が鈍いのか」と疑問を呈し、よりオープンなプラットフォーム化やM&Aを通じた事業拡大を提案しました。特に、Netflixのように自社コンテンツだけでなく、他社を買収・提携することで外部のコンテンツを取り込み、より多くのユーザーに提供する仕組みを構築すべきだと主張しました。

 バリューアクトは、過去にマイクロソフトに投資し、SaaS型ビジネスへの転換を促し、企業価値を大幅に向上させた実績を持っています。SaaS型ビジネスとは、従来の「ソフトウェアを一括提供するモデル」ではなく、クラウド上で継続的にサービスを提供し、定期的な課金を通じて安定的な収益を得る仕組みのことです。マイクロソフトは、パッケージ販売が主流だった「Microsoft Office」などをサブスクリプション型の「Microsoft 365」に移行することで、長期的な収益基盤を確立しました。

 この成功を踏まえ、バリューアクトは任天堂に対しても、「ゲーム機とゲームソフトを売って終わるのではなく、サブスクリプション型などを活用し、継続的に収益を生むビジネスモデルへの移行が必要だ」と考えたのだと思います。

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