これまで、任天堂の成長を大きく左右してきたのは、ゲーム機やゲームソフトの売り上げでした。しかし、上述のような投資家からの指摘もあり、近年は、IPの活用とその成長が、投資家の期待を上回れるかどうかの重要なポイントになっています。
任天堂の売上構造を見ると、2025年3月期中間決算において、全体の約7割が自社のゲームソフトによるものでした。しかし、近年はデジタル販売の拡大に加え、他社のIPを活用したゲームソフト販売の比率も増加しており、新たな収益機会が生まれています。他社のIP活用により、任天堂のさらなる収益拡大が期待されています。
一方で、それ以上に重要なのが任天堂自体が保有するIPの活用です。ポケモンやマリオは世界的に人気を誇るIPで、特にポケモンはディズニーキャラクターをも大きく上回る収益を出しているとの調査もあります。
そうした大人気キャラクター以外にも、任天堂は「星のカービィ」や「ゼルダの伝説」といった強力なコンテンツを持っています。ポケモンやマリオは、ゲームのみならず映画やアニメ化などを通じてその価値を高めてきました。今後、カービィやゼルダなどのIPがゲーム以外の領域で活用されることで、さらなる市場や売り上げの拡大が期待できます。
実際、2024年3月期の有価証券報告書では、オフィシャルストアでのグッズ販売による収益が記載されるようになっており、新たな収益源として成長してきていることが確認できます。
例えば、日本市場におけるグッズ売り上げは2023年3月期の39億円から、2024年3月期には87億円へと倍増しました。また、米国の「モバイル・IP関連収入等」も、映画化の成功が好影響を与えたことで、2023年3月期の263億円から2024年3月期には620億円と大幅に増加しています。
IP戦略がもたらす世界での売上成長にも注目が集まっています。現在、日本以外では北米が主な収益源となっていますが、新興市場での成長も加速しています。
2025年3月期中間決算の決算説明資料によると、日米欧以外の「ゲーム専用機売上高」は2017年3月期の249億円から2024年3月期には1601億円に増加し、「ハード販売比率」も5.4%から11.9%へと伸びています。こうした地域での売上拡大をさらに推し進める上でも、IPを活用したグローバルなブランド認知の強化が欠かせません。
こうしたIP戦略の一環として、USJに加え、シンガポール、ハリウッド、オーランドでも「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の展開が進んでいます。2025年には新たにオープンする施設も予定されており、IPの活用が着実に拡大しています。
任天堂のスイッチ2の市場での評価ももちろん重要ですが、今後の成長を左右するのは、むしろIP戦略なのかもしれません。今後、IP戦略がどのように展開されるのか、その動向に注目したいと思います。
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