この問題を解決するために、M氏に白羽の矢が立ったのだ。
しかし、M氏は大きな壁にぶつかることになった。
「なぜ?」5回の問いで真因を探ろうとするが、出てくるのは言い訳ばかり。M氏は「なぜ?」という問いで人を追い詰めるパワハラ上司という汚名まで着せられ、部下の間ではメンタルヘルス問題が多発。従業員満足度調査で開発部門は全社最下位になってしまった。
さらに悪いことに、社内では「自責の念を持て!」という言葉が長年多用され、文化として定着していた。自責の念に駆られたM氏は自らも精神的に厳しい状況となってしまい、筆者に相談が寄せられた。
早速M氏に、「思い込み」のせいにするという「ナゼナゼ虫の特効薬」を処方した。
もともとM氏は優秀な技術者。科学実験と同じように、思い込みを疑うことには慣れていた。開発メンバーを集めて組織にある根本的な思い込みを見つける議論を始めることになった。
議論を開始してわずか30分。みんなが発見した思い込みは、「早く始めれば早く終わる」ということであった。
確かに仕事が1つであれば単純な話だが、複数の仕事があふれている現状で、あれもこれも早めに取り掛かろうとしていたことで、複数の仕事を同時進行でこなさなければならないマルチタスクを強いられていた。
その結果、一つひとつの仕事の質が極端に低下し、ミスが多発し手直しに時間を奪われていたのだ。
M氏はすぐに解決策を思いついた。
それは「一個流し」という生産現場では常識的な仕事の流し方である。一つひとつの仕事に集中して、しっかりと仕上げて次の工程に渡すことで、仕事の流れをよくするカイゼン手法である。これが、開発にも有効であると閃いた。
早速、開発における「一個流し」活動が始まった。
活動を始めて3日目には同じリソースで倍の仕事をこなせるようになり、残業は激減。ゆとりができて、職場内の助け合いも進んだ。問題が起きた時も、会議まで待たずにみんなで助け合い、毎日解決するようになった。これを「問題解決一個流し」と名付けた。
これらの取り組みの結果、ライバルより3カ月以上も早く開発を完了。取引先の自動車メーカーを驚かせ、感謝状まで授与された。それだけではない。
実は自動車メーカーも同じような開発爆発に苦しんでいた。自動車メーカーはこの会社に学ぼうと次世代機器のメインサプライヤーに指名。M氏は大型受注の立役者となった。
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