さらに、これらの企業が手を組むことになれば、どうなるだろうか。例えば、自動運転に不可欠な多数のカメラを搭載するBYDの自動車に組み込まれたDeepSeekが、クルマの位置情報やユーザーの生体情報、健康状態、個人の行動、街中の道路状況など、幅広くデータを集めてAIで分析し、中国のサーバに送ることが可能になるかもしれない。国家情報法によって、民間企業は政府の公安当局などにデータ提出で協力する義務があるため、それらのデータには中国政府がアクセスできる。
今回は詳しく触れていないが、世界の監視カメラ市場で高いシェアを持つ中国企業ハイクビジョンのデータも統合され、顔認証情報なども連結される可能性がある。さらに、中国政府系ハッカー集団がサイバー攻撃で盗み出した企業や政府の膨大なデータともマッチングされていくかもしれない。中国政府が世界中を監視することも不可能ではなくなりつつある、といえるかもしれない。
とにかく今後、中国企業が協力してサービスを展開していくことになりそうだ。今後はこれまで以上に、データセキュリティ意識を高める必要がある。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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