ベースフードの公式Webサイトにあるコンテンツによれば、代表取締役の橋本舜氏はかつて渋谷のIT企業で働き、多忙のため夕食はほぼ同じ。すぐに空腹を満たせるカレーやラーメンを食べていた。コンビニで購入することも多く、食事をするのは懇親会や会食が中心だったという。健康診断の結果が少しづつ悪くなり、とはいえ自炊する時間的余裕もなく、仕事と健康的な食事を両立させる難しさを痛感していた。
そこで栄養や食品加工の本を読み漁り、好きだった麺で栄養バランスがとれた食事ができないかと100種類以上を試作。勤めていた会社を退職するほど、開発にのめり込んだ。構想から1年以上を経て、約30種の栄養素を含み、1食に必要な栄養素をバランス良くとれる麺「BASE PASTA」が完成。これが同社初の商品となった。
橋本氏は、主食の栄養価が長らく変わっていない点に、新しい可能性があると考えている。パスタやパン、ラーメンを食べるだけで知らぬ間に体が整っていく「栄養のインフラ」を目指して、主食をアップデートすることを目標に掲げる。
現在、BASE FOODの商品ジャンルには、パンの「BASE BREAD」、パンケーキミックス「BASE Pancake Mix」、クッキーの「BASE Cookies」に加え、冷凍パスタ「BASE PASTA」やカップやきそば「BASE YAKISOBA」がある。ECの他、実店舗ではコンビニを主力としている。特にファミリーマートでは2021年3月と早期から取り扱っており、専用ボックスを設置している店も多く見かける。
2月17日、IT系企業メルコホールディングスの牧寛之社長が100%出資する、MBFアクセラレーション(東京都千代田区)が、ベースフードに対してTOB(株式公開買い付け)を行うことを発表した。TOBは2月18日〜4月15日に実施。1株688円で買い取り、総額は最大で約25億円となる。このTOBによりMBFがベースフードの株式の約40%を握る予定だ。上場は維持され、牧氏は役員にならないという。ベースフードの資本が強化されて、さらなる発展の契機となるか。注目される。
富士経済は、完全栄養食市場が2030年に2021年比8.5倍の546億円まで拡大すると予想している。コロナ禍をきっかけに栄養への関心が高まったことで2020〜21年に市場が拡大し、さらに今回の記事で触れたような商品が出てきている点が、市場を活性化させている。
コロナ禍は沈静化したが、高齢化もあって日本人の健康意識は依然高い。完全食、完全栄養食、最適化栄養食と呼び方はさまざまにあるが、これらカロパ食品の市場が有望であるのは明らかだ。
もともと完全食や完全栄養食といった概念は、米国のシリコンバレーから始まったとされる。IT系の技術者が寝食を忘れて開発に没頭する中、食事をとる時間がもったいないので、簡単にバランスの良い食事ができないかといったニーズから生まれたという。
カロパ食品は、ビジネスパーソンのみならず大学受験や資格試験などでのニーズも高いはず。海外でも、日本以上に受験が厳しい、中国や韓国などに大きな市場が眠っている予感がする。新市場の勝者は、現状先行する完全メシか、BASE FOODか。それとも、これから登場する第3、第4のブランドか。カロパ食品市場のゆくえが楽しみだ。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
カビ騒動で「株価30%超下落」から半年……ベースフードはなぜ今“急成長”しているのか
「完全栄養食」BASE BREADは、第二のカロリーメイトになれるのか 成長鈍化の打開策を聞くCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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