台湾発でマーケティング領域のAIスタートアップであるAppier Group(エイピアグループ、東京都港区)が好調だ。ECやデジタルコンテンツ企業を中心に、顧客分析や販売促進などマーケティング活動に関するAIツールを提供しており、直近である2024年12月期の売り上げは過去最高の340億5700万円を記録した。
前期比では28.9%増、東証マザーズ市場(現グロース市場、2022年12月15日にプライム市場へ移行)に上場した2021年12月期からは3倍近くの成長を見せており、今期も30%超の増収を見込む。利益も2022年12月期に黒字化(営業利益5000万円)を果たすと、2023年12月期に8億100万円、2024年12月期は19億8100万円と“倍々ゲーム”以上に拡大し、今期の予想は40億5100万円だ。
エイピアの日本代表を務める橘浩二氏(財務担当シニアバイスプレジデント兼 ヘッドオブジャパン)は、好決算の背景に“絞り込んだ営業戦略”があると話す。
<後編:日本市場は「クセがある」──AI×SaaSは広まるか、業績絶好調・台湾発「Appier」に聞く>
同社は、ECやデジタルコンテンツ事業で優良顧客になりそうなユーザーを予測して広告配信の効率化をサポートする「広告クラウド」と、ユーザーごとに特性に合わせたメッセージを配信する「パーソナライゼーションクラウド」、さらに蓄積したデータの分析を通し、マーケティング施策を提案する「データクラウド」と、大きく3つのドメインを持つ。
こうしたソリューションの営業を行う上で、同社には大きな特徴がある。それは、ターゲットを売り上げ100億円以上のエンタープライズ企業に絞っていることだ。橘氏は、その狙いを次のように話す。
「AIはデータを基に学習していくことから、当社のようなサービスはベースとなるデータ量が成果のカギを握ります。事業規模が大きい企業ほど成果が出やすく、特に大口の企業では導入から1カ月で期待値の8割ほど、その後もどんどんと結果が出やすい傾向にあるのです」
いたずらに販路を拡大するのではなく、サービスと親和性の高い見込み客に絞った営業が奏功し、2024年12月期の「ARPC」(顧客当たり平均売り上げ)は前期比12%増。中でもけん引するのが、既存顧客だ。アップセルが生まれやすく、ARPCが30%台の成長を見せている。その理由を橘氏は次のように話す。
「当社のサービスは、費用対効果を事前にAIで算出できる点が強みです。例えば『100万円』を投下した場合、どのくらいの新規顧客を獲得でき、かつどの程度の売り上げにつながりそうか――といった形で予測を立てられます。また、上述した通り当社のターゲット顧客はAIと好相性なことから成果が出やすく、マーケティング活動を『投資』と捉えて投下金額を増やしていくサイクルを描くケースが多く、アップセルにつながりやすい傾向があります」
ターゲット合致率が高いため、解約率も低い。SaaS業界では3.0%が目標値といわれているが、エイピアグループでは平均して1%を下回る。2024年12月は0.38%で、0.5%を下回る月も多い。
今後は従来のエンタープライズ企業だけでなく中小企業にも営業をかけていく予定だ。
「パーソナライズクラウドとして展開しているサービスには、まとまったデータがなくてもすぐに活用できる機能がいくつかあります。AIの高度化と合わせ、中堅以下の規模でもすぐに成果を実感いただけるよう、サービスをブラッシュアップしていく予定です」
別記事では、台湾発でありながら日本市場を「最重要」とする同社から見た「日本企業への参入障壁」を聞いていく。
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