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日本市場は「クセがある」──AI×SaaSは広まるか、業績絶好調・台湾発「Appier」に聞く

» 2025年02月28日 07時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 マーケティング領域のAIスタートアップ、Appier Group(エイピアグループ、東京都港区)が好調だ。東証マザーズ(現:東証グロース)に上場を果たした2021年12月期から3年で売り上げは3倍近くに成長。2022年には東証プライム市場へ移行し、直近の2024年12月期売り上げは340億5700万円で、営業利益は前期比147.3%増の19億8100万円。今期も3割ほどの増収、営業利益は倍増以上を見込む。

<前編:台湾発AIスタートアップ「Appier」が過去最高売上 日本代表が語る“絞り込んだ営業戦略”とは?

 同社は台湾発であるが日本で上場をしており、日本代表を務める橘浩二氏(財務担当シニアバイスプレジデント兼 ヘッドオブジャパン)も「日本は最重要拠点だ」と語る。一方、地域別の売上収益比率を見ると、最近は「韓国」や「欧米」の好調が目立つ。

 橘氏は現在の日本市場の開拓状況をどう見ているのか。上場から約4年たつ今、実際に日本市場で戦う中で見えてきた難しさがあるという。

AI企業が欧米でビジネス拡大しやすい理由

 同社の事業ドメインは3つ。ECやデジタルコンテンツ事業で優良顧客になりそうなユーザーを予測することで広告配信の効率化をサポートする「広告クラウド」と各ユーザーの特性に合わせたメッセージを配信する「パーソナライゼーションクラウド」。さらに蓄積したデータの分析を通し、マーケティング施策を提案する「データクラウド」を有し、主力は売り上げのほとんどを占める広告クラウドだ。

 台湾発の同社だが、地域別の売り上げ比率は主に日本と韓国で構成される「北東アジア」が67%を占める。そのうちECの拡大が顕著な韓国が“稼ぎ頭”だ。韓国最大級のECモール「クーパン」を顧客に持ち、他の企業でもクーパンの事例を基に導入が進んでいる。

地域別売上収益比率(2024年12月期 決算説明資料より)

 これまでの主戦場はアジアだったが、近年成長が著しいのは売り上げ全体の2割ほどを占める欧米市場だ。欧米市場における売り上げは、2023年12月期から2024年12月期にかけて45%増。北東アジアを上回る成長率であり、同社の日本代表を務める橘氏は「想定以上」と頬をゆるめる。

 「当社はAIを軸にしたテック企業です。アジアと比較してデジタル戦略が先行している欧米企業では、社内にAI人材を多く抱えており、当社の技術力を評価してもらいやすいことから、想像以上のペースで導入が進んでいます」(橘氏)

エイピアの日本代表を務める橘浩二氏(財務担当シニアバイスプレジデント兼 ヘッドオブジャパン)(提供:Appier Group)

日本市場の参入障壁が高い「2つの理由」

 とはいえ、欧米市場ではAIツールの競合も多い。比較してAIの導入が遅れている東南アジアを中心としたアジア全体で、いかにシェアを高められるかが当面の課題だ。橘氏は次のように話す。

 「ひとくちに『AI』といっても、世の中にはさまざまなレベルのものが混在しています。このあたりの違いについて、社内にAI人材がそこまで多くないアジアの企業には当社の優位性に納得いただくまでのハードルがあり、どう攻略していくかは模索しているところです」

 日本も難しい市場の1つだという。同社の開発拠点は台湾だが、日本にはフロント部隊やバックオフィス、広報部門などを設置するなど「最重要拠点」と捉えている。

 さらなる導入拡大を狙う日本市場について、橘氏は「クセがある」と話す。例えば「決裁」だ。日本企業は、直接やりとりをする担当者だけでなく、その2つ上くらいの役職まで納得してもらえないと導入に至らないケースが多い、と橘氏は分析する。

 「当社のサービスは、費用対効果にシビアとされる欧米市場でも一定の成果を収めています。しかし、日本市場で勝つにはサービスがグローバルレベルなだけでは不十分です。いかに営業やマーケティング活動をローカライズするかがカギだと考えています」(橘氏)

今後も、欧米と北東アジアが堅調に拡大すると予想している(2024年12月期 決算説明資料より)

 同様の課題は、多くの海外ベンダーが直面しているはず。しかしながら、一度ハードルを越えられれば「事例主義」で横並びの風潮がある日本企業への導入がどんどんと進んでいくはずだ。エイピアグループがどのような一手でAI×SaaS領域を日本で拡大していくか、目が離せない。

<前編:台湾発AIスタートアップ「Appier」が過去最高売上 日本代表が語る“絞り込んだ営業戦略”とは?

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