今回、営業段階での黒字転換が実現し、投資家や市場の目線は楽天の「再成長」への期待にシフトしつつある。モバイル事業の損益改善が続けば、今後はAIやデジタルコンテンツ領域など、新たな収益源への投資も活発化する可能性が高い。
ただし注意点としては、最終損益がいまだ赤字であることや、モバイル分野において大手キャリアとのし烈なシェア争いが続くこと、世界的な金利上昇や為替変動に伴う調達コスト増といった不透明要因も多い点だ。こうした課題を乗り越え、真の「起死回生」となるためには、さらなる事業効率の改善と経済圏の拡大が欠かせない。
そう考えると、この度の楽天モバイルにおける黒字転換について、モバイル事業単体の損益にこだわるのは本質的ではないと考えられる。
楽天はモバイルユーザーを獲得することで、それを楽天市場や楽天カード、楽天銀行といった他のサービスへ送客し、グループ全体の広告費を削減しつつ、収益向上につなげることを狙っている。この点で、楽天モバイルの収益性だけを切り取って評価することは不適切だ。むしろ、モバイル事業がどれだけ他のサービスへ利用者を誘導できるかが成長のカギとなる。
黒字化を単純に喜ぶのではなく、それが経済圏全体にどのように波及するのかを見極める必要がある。もし、楽天モバイルが楽天市場やFinTechへの誘導効果を十分に発揮できなければ、グループ全体の成長は鈍化し、再び収益圧迫要因になりかねない。
しかし、現状の決算を見る限り、モバイルのコスト削減が進み、ユーザーの定着も改善しつつある点はプラス要因といえる。今後、これをグループの成長へどうつなげるかが三木谷氏の腕の見せどころであり、それ次第で楽天の本格的な成長軌道への復帰が決まる。黒字化は一つのマイルストーンに過ぎず、経済圏の成長戦略が機能すれば、中長期的にはさらに明るい展望が開ける可能性が高いのではないだろうか。
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