「地理」が決まれば、「産業(構造)」が決まる。産業革命は西欧と日本でしか広まらなかった。
その背景には封建制度の誕生がある。封建制度は、
という条件がそろった場所にしか生まれなかった。
封建制度が生まれて余剰生産と貴族が生まれた。小金持ちとその人たちが投資に回せるお金が生まれたのだ。つまり、封建制度が生まれなければ、起業家精神を発揮できる人たちは誕生しなかったのだ。その人たちが農業の生産性を向上させることでさらに儲けられることに気づいた。彼らが資本主義の担い手になったのだ。
産業革命が起こった時に彼らは起業家精神を発揮し、技術と資本を活用して莫大な富を作り出し、さらに技術と資本を社会に広めたのだ。
印刷、コンパス、火薬の三大技術が生まれたのは中国である。しかし、中国は技術を産業革命に生かせなかった。それは中国では封建制度が生まれる余地がないほどの中央集権体制が敷かれていたからであった。強烈な中央集権官僚制度という、人類史に残る巧みな統治体系が発明された背景には、中国の地理的制約があったと述べた。広大な乾燥地帯に生まれた中国は、歴史的に、安定した食糧生産のために灌漑(かんがい)をはじめとする巨大なインフラ整備が不可欠で、かつ騎馬民族の襲撃から自らを守るために強烈な中央集権体制が生まれたのだ。貴族や彼らによる余剰生産 (投資可能資本)の誕生は、強力な中央集権制度のために阻止されてきたのだ。
米国や南米でも産業革命は起きなかったのはこの条件がそろわなかったからだ。
地理が決まれば、気候、周辺国、民族性、産業が決まってくる。そうなればその国の歴史も決まるといっていい。厳しい気候の中にあり、強大な周辺国に囲まれ、たびたび侵略を受け、勤勉性や起業家精神を育めず、自国を強化するような産業を興せなかったら、険しい山脈や大洋などの天然の要塞で守りがない限り、悲しい歴史となる可能性が高い。
特に大国が相互確証破壊につながる核兵器のような強力な軍事力を持つことにより、大国同士が直接の戦いを避ける場合、その大国の間に位置する国々(リムランドとも言う)が大国の代理戦争の舞台になってしまうことがある。今のウクライナがそれにあたる。かつての朝鮮戦争やベトナム戦争もリムランドにおける大国の代理戦争であった。特に半島国家は常に背水の陣で逃げ場がないような状態なのだ。
また、国家の指導者の重要意思決定は歴史に影響される。ロシア帝国の復活を夢見るともいわれるプーチン氏が大帝国であった過去の栄華を忘れられず、ロシアが国家として凋落する中で、危険な賭けに出ることがある。過去に大文明であったこともあり、急速に台頭する覇権国家候補が、尊大にふるまうこともある。歴史的建造物の近辺で指揮を執る指導者が、裸の王様になってしまう時は要注意である。地理的条件が作り出した過去の歴史は現在の指導者にも大いなる影響を与えることがあるのだ。
「地理」が決まれば、「統治体系」も決まることについては、先述の中国が中央集権的になる背景分析を参考にしてほしい。地理がその統治体系に大きな影響を与えるロジックについて考えていただいたと思う。
自由民主主義を謳歌しているわれわれは、条件反射的に強権国家を批判しがちだ。また、強権国家は劣った統治体制であると思いがちだ。しかし、強権国家が生まれてきた背景にも思いをはせる必要はある。簡単にその国で自由民主主義的な統治が生まれない、根付かない背景を理解しないと、米国が世界中に自由民主主義を輸出しようとしてうまくいかなかった学びを生かせない。
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