「自己紹介」が下手な人の“勘違い” 知れば「商売繁盛」への近道に?

» 2025年04月09日 07時00分 公開
[日野眞明ITmedia]

この記事は、『はじめまして売れる『伝え方』のぜんぶです 新発見!お客様の反応が変わる58秒』(日野眞明著、三恵社)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 うまい自己紹介と商売繁盛は似ている──。

 私は、講演や講習会に講師として招かれた席上で、実に多くの自己紹介に接してきました。そこで自己紹介にもうまい下手があることを知りました。

 うまい自己紹介に感心する一方、コンサルタントとしては、下手な自己紹介が気になりました。どうしてうまくいかないのだろう? 何かいいアドバイスはできないだろうか? 長年、そのことを考えてきました。

 そして気付いたのが、私がコンサルタントしている商売繁盛も、この自己紹介も、「相手に自分を知ってもらう」という同じ目標を目指しているのだという点です。そして、その両方とも、失敗は同じような原因で起きていることに気付いたのです。

自己紹介が失敗する理由

 一言で述べるなら、失敗の原因は、自分(お店、商売)のことばかり考えて、相手(お客さま)の立場に立つことを忘れていた、ということだったのです。

 相手の立場に立つとは、「相手のために」ではないことはもうお分かりだと思います。相手に寄り添い、彼らのニーズを見つけてあげることです。

 このために、相手を好きになり、彼らの話に耳を傾け、彼ら自身も気づいていなかったような、心の底にしまわれていた欲求を掘り出すのです。これはなかなか大変です。でも、この苦労はうまい自己紹介、そして商売繁盛という二倍三倍のご利益となって報われます。実は、自己紹介も商売繁盛も、人が人を呼び、評判が評判を呼ぶという「複利」で、広く、大きくなっていくという性質があります。

 複利の利点は最初、なかなか実感できないものです。しかし焦ることなかれ。苦労とか努力とか考えないほうがいい。複利の効果が実感できるまで続かないからです。楽しみましょう。

写真はイメージ、ゲッティイメージズより

 本書では「お客さまの立場に立とう」と口を酸っぱくして述べています。商売繁盛へ至る道は「お客さまの立場に立つ」ことができた時点で、ほとんど成し遂げた、といってもいいからです。

 お客さまの立場に立つことは、お客さまの実像を知ることでもあります。大きな企業などは、このために多大なコストを払い、さまざまな調査・研究を行います。中小企業では同じまねはできません。しかし中小企業にはちがう有利な点があります。

 それはお客さまとの距離の近さです。大きな企業の場合、従業員はお客さまとちがうコミュニティーで生活しているケースも稀(まれ)ではありません。一方、中小企業の場合、ほとんどがお客さまと従業員は同じコミュニティーに住む隣人です。隣人が何を求めているのか、本音はどこにあるのか、を知るのにこれほど有利なことはありません。

 後は意識のもちかたひとつです。お客さまは何を求めているのかを常に念頭に置き、見て、感じて、ひらめきましょう。

主語は「お客さま」 ありがちな勘違い

 ニーズは私のニーズではありません。お客さまのニーズです。私のこだわりではありません。お客さまのこだわりです。ここにピントを合わせることが商売繁盛への近道です。

 あなたのお店にいらっしゃったお客さま、あなたの商品を買ったお客さまは、なぜその行動を選択したのでしょうか? その日その日の売り上げに一喜一憂するのも大切なことですが、この「なぜ」を常に考えましょう。

 お店や商品が好きな場合もあるでしょう。本当は別のものが買いたかったのに、あなたのお店がそれを置いていなかったというケースも考えられます。はたまた、近所にあなたのお店しかないからという理由もあるはずです。こんなふうにお客さまの「なぜ」を想像する癖を自分につけていくのです。

 この「お客さまのニーズ」が、ほんものの情報です。従来言われる顧客管理とはこの点が異なります。顧客管理では、名簿を整理し連絡先や生年月日を把握するのがせいぜいです。顧客「情報」管理となってはじめて、商売に生かすことができます。

 なぜなら、お客さまは自分の情報を的確に察知してくれるお店を尊重し、価値があると感じ、お金を払うからです。

顧客情報管理 2つのポイント

 では、どんなふうに顧客情報管理をすればいいのでしょうか。

 例えば、顧客名簿にあるお客さまの住所を、実際の地図に落とし込んでみましょう。近所のお客さまが多いでしょうか? それとも遠くからのお客さまが多いでしょうか? はたまた、商品をお客さまの用途別に仕分け直して、数をかぞえ、円グラフを作ってみるのもよいでしょう。食料品店なら、間食のための買い物か、食事のための買い物かなどといった分け方です。さらにくわしく、それは朝食用かランチ用か、夕食用か、といったことを仕分けの基準にしてみるという手もあるでしょう。

 方法はさまざまですが、ポイントは2つです。

 第一は「見て分かるようにする」ことです。

 第二は「お客さまをもっと知りたいという観点で仕分けする」ことです。これまで話してきた「相手を好きになる」こと、「仲間さがし」と「順位づけ」の応用です。

 こんなふうに、すでに手元にある顧客名簿や売り上げ記録でも、地図やグラフに落とし込んでみたり、あらたな仕分けの基準を考えたりしてみると現れてくるのは、お客さまの具体的なイメージです。これが「仮説設定」です。

 この具体的なお客さまのイメージが、何を必要としているのか(=ニーズ)を考えてみましょう。安さか、おいしさか、便利さか、高級感か、快適さか──。ここにひらめきが生かされます。

 この2つのポイントを押さえれば「見て、感じて、ひらめく」ことが容易になります。

 お客さまのイメージを想像できたら、次はそのイメージの中のお客さまのニーズと、みなさんが実現可能な解決方法を考えます。

 先に述べたような「遠方から来て夕食用の食料を買う客」であれば、総菜や冷凍食品のラインアップを増やせば、お客さまが喜んでくれるかもしれないとか、遠方から来ているので途中で汁がこぼれたりしないようメニューに配慮してみるとか、さまざまなアイデアが浮かんでくるはずです。

 こうしたアイデアの中で、自分たちのリソースでも可能なものから実現を模索していきましょう。実現できれば、お客さまはみなさんに「ありがとう」と感謝してお金を払ってくれます。お客さまはあなたを、すばらしい理解者だと感じるからです。

 これが商売繁盛です。

筆者プロフィール:日野眞明  MORE経営コンサルティング 代表取締役

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名古屋商科大学大学院客員教授。愛知県生まれ。年間宿泊出張を100泊近くする“移動の達人”。

中央大学経済学部国際経済学科卒業後、イトーヨーカ堂を経て、名古屋商科大学大学院経営情報学研究科修了、MBA。

“商売繁盛 ”を応援することが大好きなマーケティング経営コンサルタント。著書には「ふせん1枚から始める『事業計画』」「脳を揺さぶるマーケティング読本」がある。


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