マーケティング・シンカ論

色んな外資マーケターに聞いてみた 実際「フレーム」なんて使えない、「思考力」を鍛えた方がいい理由(1/3 ページ)

» 2023年11月06日 08時00分 公開
[小林幸平ITmedia]

本記事は、小林幸平氏のnote「色んな外資マーケターに聞いてみた。マーケティングフレームなんて使えないものを覚えるより、マーケティング思考を鍛えた方がいい理由」をITmedia ビジネスオンライン編集部で一部加筆・編集の上、転載したものです(無断転載禁止)。

筆者プロフィール:小林幸平

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京都大学大学院医学研究科卒業後、 日本ロレアル株式会社に入社。新規ヘアケア製品ノーシャンプーのプロダクトマネジャーとして新製品の開発および販売戦略立案を担当し、同製品は楽天市場総合ランキング1位を獲得。その後デジタル・イーコマースにおけるマーケティング責任者として事業拡大戦略の立案と推進に取り組んだのち、2019年8月よりメイベリンニューヨークのアジアヘッドクォーターにてリージョナルマーケティングマネジャーとしてビジネス統轄を担う。その後、2021年2月よりノバセル株式会社の執行役員として同社事業を牽引。

また上場企業へのアドバイザリーや、合同会社スモールミディアムCEOとして、D2Cブランドの経営も行う。

公式noteはコチラから。


 マーケティングに携わってきたキャリアの中で、ずーっと思っていたことがあります。「マーケティングフレームってほんとにビジネスの現場で使えるのかな」ということです。

 非常に個人的な話ですが、マーケティングキャリアの人を見極めるときに、すぐにフレームから入る人はその時点で「あ、たいしたことないな」と思うくらいにフレームが嫌いです。

 ただ一方で、マーケティングフレームについて書かれたnoteや、「○○出身のマーケターが語る! マーケティングフレームの極意」という帯は一般的に手に取られやすいので、マーケティング領域外でお仕事をされている方からすると、あたかも世の中のマーケティングという職に携わる人たちはマーケティングフレームオタクなのかと思われているんじゃないかという気さえします。

 なので今日の問いは、「マーケティング業務においてマーケティングフレームは使えるのか」ということについて考えていきます。

 それにあたり、今日は外資メーカー出身の私の経験、そして、ほぼ全ての外資マーケティング企業に散らばっている私の元同僚たちのヒアリングも踏まえ、整理していきます。

色んな外資マーケターに聞いてみた 「フレームって使っていますか?」

 外資マーケティングキャリア出身の方は100%経験したことがあると思うのですが、「外資マーケ出身のマーケター=フレームで仕事をしている」と思われがちですよね。特に転職したときには「うちの会社にも、前職の経験を生かしてトップレベルのマーケティングフレームをインストールしてほしい」と言われることが多いです。

 前職の知り合いで、私のように外資系からそれ以外にキャリアチェンジした人と久しぶりに飲むと、ほぼこの経験をしています。

 私も今のノバセルに転職した2年前は、「マーケティング戦略資料を小林さんにレビューしてもらって、フレームを与えてもらおう!」みたいなノリがありましたが、聞かれるたびにそんな大それたものはなかったので、心の底で震えていました。本に載っているマーケティングフレームは全部頭に入っているに違いない、と思われがちです。

 2年前、ロレアルを辞めて外資畑の外の世界に飛び込み、ノバセルにきて以来、「マーケティングフレームなんて一つも持ってないし、使ったこともないけど、なんかフレーム使いこなせる人として採用されちゃってないかな。みんなの期待に応えられているのかな……」と思うことさえありました。

 なので、勇気を出して、同じく外に転職した前職同僚にこんな質問をしてみました。

 「今の会社で、マーケティングフレームって、使ってる……よな?」

 結果としては10人以上に聞いて、YESと答えたのはいまのところ1人だけです。

 企業名は伏せますが、私の元同僚や先輩には、誰もが知るスタートアップのCMOから、ありとあらゆる外資メーカー(みなさんが想起する、マーケティングがイケていると言われる会社にはだいたい知り合いがいます)まで、誰もフレームを使って仕事をしていないと。

 内心ホッとしました。僕は前職でサボっていたわけではなかったのだと。

マーケ (画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 少し聞き方を変えて、こうも聞いてみました。

 「マーケティングフレームをいくつ知っていますか?」

 これはまばらでしたが、だいたい多くの人は3C分析と4Pくらいにとどまりました。恐らくマーケティングドメインにいない人達とおおむね変わらない回答です。

 上でYESと答えていた方は、過去にマーケティングフレームを使うことで有名な某消費財メーカーにプレイヤーとして所属していたようで、その方のフレームが今でも会社に資産として残っているため、フレーム文化があるとのこと。

 もちろん、マーケティングにも流派があるので色んな考え方はあると思います。ですが、世の中のイメージと違って、私の周りのトップランナー、そしてその周りにいる方々は、ほぼフレームを使っていない。

 ちなみに、新卒で入社したロレアルはかなり研修が手厚い会社でしたが、マーケティングフレームを勉強するような研修は一度も受けた記憶はありません。本を読めと強制されたことも、フレームを知らないからという理由で仕事に困ったこともなかったです。これは結構外から見た時には意外なのではないでしょうか。

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