SaaSビジネスの将来はどうなるのか。市場データを見る限り、SaaS業界そのものは依然として成長を続けている。ガートナーなど調査機関によれば、グローバルのSaaS市場規模は引き続き年間15〜20%の成長を続け、2025年には3000億ドル規模に達すると予測されている。問われているのはSaaSの存在そのものではなく、その形態だ。
今後のSaaS進化の方向性はいくつか見えてきた。まず「AIネイティブSaaS」の台頭だ。ChatGPTをはじめとする生成AIの一般化により、最初からAI機能を中核に据えたソフトウェアが増加している。マネーフォワードの「クラウド会計 Plus for GPT」もその一例だ。ユーザーは複雑なマニュアル操作から解放され、AIと対話するだけで業務を完了できる。
第2に「エージェント指向・自動化プラットフォーム」への進化がある。従来型SaaSが人間向けインタフェースを提供していたのに対し、AIエージェント時代にはソフトウェア同士が連携し合う層が重視される。人間には対話インタフェースを、裏側ではマルチアプリを調停するエージェントを提供するサービスが主流になるだろう。マネーフォワードの「AIエージェントプラットフォーム」構想はこの方向性を先取りしたものだ。
第3に「PaaS化・オープンプラットフォーム」の流れがある。SaaS企業自体の進化として、外部開発者やパートナー企業が自社プラットフォーム上でアプリや拡張機能を作れる仕組みを提供する動きが活発化している。こうしたエコシステムを形成することで、単なるアプリケーション提供から脱却し、プラットフォームビジネスへと進化する。
ビジネスモデルの面でも、「使用量ベース・バリューベースの課金モデル」へのシフトが進んでいる。従来のSaaSは月額・ユーザー数ベースの固定料金が主流だったが、実際の使用量や成果に応じて料金が変動するモデルが増加している。マネーフォワードの辻CEOも「AIエージェントでプライシングの方法は変わるだろう。データ量、処理数の課金料に変わっていく」と予測している。
マネーフォワードの戦略は、AIエージェント時代を生き抜くための一つのロードマップを示している。それは(1)データとロジックを核心に据え、(2)AIエージェントによる自律的業務処理を実現し、(3)オープンなエコシステムを形成し、(4)業務知識とテクノロジーを融合させるというものだ。既存SaaS企業は、こうした方向性を参考にしながら、自社の強みを生かした独自のAI戦略を模索すべきだろう。
ナデラCEOの「SaaS is Dead」発言から始まった議論は、ビジネスソフトウェアが直面する大変革の始まりを告げるものだった。その変革の波に乗り、新たな付加価値を創出できるSaaS企業だけが、AI時代の勝者となるだろう。マネーフォワードのAIビジョンは、その挑戦の一つの形を示している。
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