従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」の件数は、2年連続で過去最多を更新──。そのような結果が帝国データバンクによる調査で明らかになった。相次ぐ人手不足倒産だが、その背景には何があるのか。
2024年度の人手不足倒産は350件に上った。2013年度の集計開始以降で最多となった前年度の313件を上回る結果となった。
業種別で見ると「建設業」が111件(前年度比17件増)で最も多く、全体の約3割を占めた。「物流業」が42件で続いた。両業種ともに、時間外労働の上限規制が適用されたことによる「2024年問題」の影響を受け、人手不足倒産が高水準で発生し続けていると考えられる。
一方で、近年は賃上げに向けた動きが活発化している。大企業が若手人材の採用強化に乗り出していることや、政府が最低賃金を全国加重平均で1500円に引き上げる方針を表明したことなどを背景に、今後も賃上げ機運は一層加速すると見込まれる。
さらに、より良い待遇を求める動きが強まったことで転職者数も増加しており、人材獲得競争は一層激化するとみられる。こうした状況の中、賃上げ余力を持たない小規模事業者を中心に、「賃上げ難型」の人手不足倒産が高水準で推移すると見込まれる。
人材の確保・定着に欠かせない賃上げの原資を確保するにあたっては、価格転嫁の実施が必要になると考えられる。しかしながら、受注競争が厳しい業界においては、価格転嫁の実現は容易ではない。
全業種平均の価格転嫁率が40.6%であったのに対し、建設業は39.6%、物流業は32.6%にとどまった。「価格転嫁を取引先に説明する際に、モノの値上がり分であれば納得されやすいが、賃上げ目的だとなかなか受け入れてもらえない」といった声も寄せられている。
同社は、「今後、『価格転嫁から賃上げ』という流れが実現するかどうかが、人手不足倒産の動向を占う指標の一つとなる」とコメントしている。
調査の集計期間は2013年1月1日〜2025年3月31日。集計対象は負債1000万円以上・法的整理による倒産。
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