「よーじや」はなぜロゴを変えたのか 社長が語る、舞台裏と再出発120年企業の変身(5/5 ページ)

» 2025年04月24日 06時00分 公開
[小林香織ITmedia]
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どうやって「みんなが喜ぶ京都」にするのか

 リブランディングにあたり、新たにコーポレートスローガン「みんなが喜ぶ京都にする」を掲げた。「みんなが喜ぶ京都」とは、どういうことなのか。まず、國枝社長が感じている現状の京都の課題を聞いた。

 「京都と聞くと、『オーバーツーリズム』『財政難である』『観光客が多くてバスに乗れない』など、漠然とした住みにくいイメージがある状態に危機感があります。実際、京都市の人口減少は深刻化しており、住人が住みづらい街になってきています。その原因の一つと考えられるのは、京都観光が京都市に集中している点だと思います」

京都市の有名観光スポットである嵐山の「竹林の小径」(筆者撮影)

 京都市の観光総合調査によると、2023年の同市の観光客数は5028万1千人でコロナ禍前の水準に戻ってきている。外国人宿泊客数は535万7千人で過去最高だった。また、京都市の住民基本台帳に基づく日本人の人口減少数は、2020年5846人、2021年8870人、2022年1万1317人と3年連続で全国ワースト1位に。2023年は1万801人で神戸市に次いで2位だった。

 そうした課題感が小売業にどう結びつくかというと、「外国人向けに商売をしていて、地元の人たちに目を向けていないブランドだと認識されてしまうこと」だという。

 「120年にわたり京都で事業を営んできた企業として、京都に貢献したい思いがあります。本業では、京都土産としての需要を引き続き担いつつ、地元の方も含めてみなさまに愛される『おなじみの店』へのイメージ転換を目指し、カフェ・小売り事業で日常使いしていただける新商品開発や販路拡大を図ります。さらに、地域貢献活動や京都の魅力を発信する事業にも取り組んでいきます」

2025年2月には、よーじやの肌ケアブランドと、よーじやカフェが融合した新業態の店舗「よーじや 四条河原町店」がオープン

 おなじみの店へのイメージ転換の一貫として、「ジェイアール京都伊勢丹」や「北千住マルイ」など観光地以外への出店も進めている。地域貢献活動では、「京都サンガF.C.」など地元のスポーツチームのスポンサーを務める。また、京都でモノづくりをしている人と手を組み、その魅力を発信していく新事業も予定しているという。

 「ビジョンに忠実に事業を展開し、京都に欠かせない企業として、みなさまに存在意義を感じていただけるように成長したい」と國枝社長は意欲を示した。一定数の批判も想定のうえで、リブランディングに舵を切ったよーじや。老舗企業の命運をかけた挑戦に、多くの消費者が関心を寄せている。

著者プロフィール:小林香織

 1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。

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