再び動き出した「地銀再編」で進む「二極化」 SBIも頼れない今、各行は何をすべきか(4/4 ページ)

» 2025年04月30日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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SBIの「地銀連合」がしぼんだワケ

 SBIホールディングスの地銀連合構想は、当初「第4のメガバンク構想である」と北尾吉孝会長がぶち上げていました。島根銀行をはじめ当初の何行かには資本注入もしていましたが、提携行の数を追うごとにその金額が減ったり、徐々に業務支援のみ実施という方向に転換したりと、構想そのものが縮小化しています。結局は9行と業務提携をしたところで、プロジェクト自体が開店休業状態になってしまいました。その理由の一つは、SBIの指南の下、資金運用として買った外債が、軒並み含み損を生んだことがあります。

 そしてもう一つ、SBIは限界地銀支援を打ち出すことで、以前より仕掛けていた新生銀行買収に関する金融庁からのお墨付きを狙っていた、という背景も見逃せません。2021年12月に思惑通り新生銀行を傘下に入れたSBIにとっては、限界地銀支援ビジネスはお役御免になったという感が強いのです。

 限界地銀に関して、SBIグループの「お客さん」として引き続き付き合いを続けてはいるものの「地銀連合構想」などというものは既に有名無実化しているのです。当該地銀からすれば、SBIの収益ビジネスと新生銀行買収に貢献し含み損を増やしただけで、得るものは少なかったといえます。

 今回の金融庁ヒアリングは、このような状況に加えてマイナス金利下で一度は増したはずの危機感が「喉元過ぎれば」でゆるんでいないかと、当局として金利上昇局面を迎えて危機感を募らせたと考えるべきでしょう。その結果として、限界地銀はじめ非有力行に強力なハッパをかけていこうとしている、と筆者の目には映っています。

 対象の地銀は、近隣行との統合や異業種との提携も含めて、まずは何より主体的に動くことが必要絶対条件であることはいうまでもありません。「あなた任せ」で事を進めるならば「地銀連合構想」の二の舞になりかねないからです。

 コロナ終息と金利ある世界復活の中で、再編・提携によって着々と足場固めを進める地銀有力行に対して、無策のまま下降局面を迎えかねない非有力行たち。昨今の再編活発化は、見方を変えれば長期的な経営安定化に向けて危機感を持って動いているか否か、という「地銀二極化」の現われともいえそうです。

 石破政権が掲げる経済活性化の切り札である「地方創生」の実現に向けて、地銀が地元の事業者を支え続けられる体力を備えることは不可欠な要素です。非有力地銀の経営者は、自行の中長期的な経営安定化が国家課題解決に直結しているという自覚をもって、再編を含め主体的改革に取り組んで欲しいと思うところです。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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