1990年代以降、IT技術の普及があり、POSによる販売、在庫状況の即時把握、物流や生産工程の一体管理も可能となりました。また、同じころ、ロードサイド市場が拡大していたことによって、百貨店、スーパーに依存しない出店による成長も可能になっていました。
ファストリは、SPAとして在庫リスクをITにより把握しつつ自社で抱えることで、既存アパレルを圧倒するコスパを実現しました。また、ロードサイドで販売量を拡張することで、売り切る体制も構築して、高い収益を実現しながら、さらにサプライチェーンへの再投資を継続したことが、今につながっています。
在庫リスクを本源的に解決することなく、他社に押し付けることで回避しようとした百貨店、量販店は衰退しました。逆に、リスクに正面から向き合って解決したファストリは、小売業トップの企業価値を生み出しました。
その基盤となったのは、ITという技術革新であったと言えるでしょう。技術革新を先んじて取り込み、積極的にリスクを取るものが勝者となる、そんな教訓が、ファストリの歴史から見えてくると思うのです。
中井彰人(なかい・あきひと)
(株)nakaja lab 代表取締役/中小企業診断士
早稲田大学法学部卒業。みずほ銀行産業調査部退職後、2016年独立。流通アナリストとして活動中。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務めつつ、新聞社、テレビ局、出版社などマスコミ各社に寄稿、知見提供、出演多数。東洋経済オンライン、プレジデントオンライン、ダイヤモンドDCS、新潮フォーサイト、ITmediaなどにて月刊連載中。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウェーブ賞)受賞。著書として『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社 2021)がある。
中川朗(なかがわ・あきら)
デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社DTFA Institute主任研究員
大阪大学大学院文学研究科文化表現論修了。シンクタンク、金融機関などで産業調査・国内消費の分析業務に従事。みずほ銀行産業調査部では小売・消費財産業のアナリストとしてサブセクターヘッドを担う。北海道から沖縄、海外は韓国・香港まで幅広く、大手流通や専門店、卸、EC、テック企業を調査。消費の構造変化と企業戦略について産業調査レポート・記事を執筆。2025年5月設立されるデロイトトーマツ戦略研究所に参画予定。
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