“安いのに機能的”は最強説 ワークマンが仕掛けた市場の空白地帯小売ビジネス(2/2 ページ)

» 2025年05月06日 06時00分 公開
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小売ビジネス』(中井彰人、中川朗/クロスメディア・パブリッシング)

 このワークマンの変貌は、ポジショニングマップを的確に設定して、そこにスペースを見出すという、絵にかいたような成功事例でした。ワークマンは自社の個人投資家説明資料の中に、アスレジャー市場規模というページを設けて、縦軸を高価格と低価格、横軸に機能性とデザイン性というポジショニングマップを作って説明していますから、一度、検索してご覧になっていただくと、その考え方がきれいにわかると思います。

 こうした考え方は、オーナー家一族ながら、大手商社三井物産グループ幹部の経歴が長く、その後、会社に迎えられた土屋専務の存在が大きいようです。外からの俯瞰的な視点が加わることは、企業経営の変革には有効なのだという事例でしょう。

 アフターコロナとなり、アウトドアブームは失速し、ワークマンもその反動の影響を受けています。また、ワークマンの業績は踊り場に差し掛かり、「女子」業態も単独では地方展開が難しいとして、ワークマンCOLORSに統合されました。

 しかし、会社は、お客さまの「声のする方に、進化する」の精神で、少しずつ変化し続けていく、と宣言しています。俯瞰的視点の下、この方針を続けていけば、また新たなスペースを見つけ出すのではないでしょうか。

著者プロフィール:

中井彰人(なかい・あきひと)

(株)nakaja lab 代表取締役/中小企業診断士

 早稲田大学法学部卒業。みずほ銀行産業調査部退職後、2016年独立。流通アナリストとして活動中。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務めつつ、新聞社、テレビ局、出版社などマスコミ各社に寄稿、知見提供、出演多数。東洋経済オンライン、プレジデントオンライン、ダイヤモンドDCS、新潮フォーサイト、ITmediaなどにて月刊連載中。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウェーブ賞)受賞。著書として『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社 2021)がある。

中川朗(なかがわ・あきら)

デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社DTFA Institute主任研究員

 大阪大学大学院文学研究科文化表現論修了。シンクタンク、金融機関などで産業調査・国内消費の分析業務に従事。みずほ銀行産業調査部では小売・消費財産業のアナリストとしてサブセクターヘッドを担う。北海道から沖縄、海外は韓国・香港まで幅広く、大手流通や専門店、卸、EC、テック企業を調査。消費の構造変化と企業戦略について産業調査レポート・記事を執筆。2025年5月設立されるデロイトトーマツ戦略研究所に参画予定。


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