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「雪塩さんど」大ヒットの舞台裏 調味料から菓子事業にかじを切った、その理由とは?地域経済の底力(1/5 ページ)

» 2025年05月21日 12時00分 公開
[伏見学ITmedia]

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


 2024年の観光客数は966万8800人(前年比17%増)と、コロナ禍前の水準までほぼ戻ってきた沖縄県。近年、その沖縄のお土産事情に変化が起きている。

 長らく「ちんすこう」や「紅いもタルト」が沖縄土産の定番だったが、それに取って代わるかのように、いつの間にか高い知名度を獲得したのが、「雪塩さんど」だ。コーンフレークを練り込んだミルク風味のエアチョコをクッキーではさんだ、“甘じょっぱさ”がクセになるお菓子である。

 鮮やかなブルーの紙袋を持つ観光客の姿は、今や沖縄ではすっかりおなじみの光景となった。

宮古島の雪塩による大ヒット商品「雪塩さんど」(筆者撮影、以下同)

 製造・販売元は、宮古島の雪塩(沖縄県宮古島市)。調味料の「雪塩」で知られる企業である。2018年に発売された雪塩さんどは、コロナ禍を経て、近年売り上げが急速に伸びている。現在の年間販売額は約20億円と、ここ1年ほどで倍増。押しも押されもせぬ同社の看板商品となっている。

 今回は、この大ヒット商品を生み出した同社の西里長治社長をインタビュー。ブランド戦略と商品開発の舞台裏に迫った。

ギネス世界記録にも認定された塩

 宮古島の雪塩は、1994年7月にパラダイスプランとして創業。「みやこパラダイス」という蝶々園を運営するなど、観光関連事業でスタートし、2000年8月に製塩事業を立ち上げた。この時に生まれたのが「雪塩」だ。

 雪塩は、宮古島の地下にある海水を原料に作られる。サンゴ礁が隆起してできた琉球石灰岩の地層を通して自然ろ過された地下海水をくみ上げ、特殊な製法で瞬時に水分を蒸発させて製造する。この製法により、通常は取り除かれるマグネシウムなどのニガリ分までを含んだ、ミネラル豊富な塩が生まれる。製塩機からサラサラと落ちてくる塩の様子が、まるで粉雪のようだったことから雪塩と名付けられた。

 この独自の製品は、世界で最も多い種類(18種類)のミネラル成分がある塩として、ギネス世界記録に認定された。その後、調味料としての高い品質が評価され、モンドセレクションでも最高金賞を受賞した。まろやかな味わいと雪のような細かい粒子が特徴で、素材のうまみを引き出す塩として愛用者を増やしていった。

「雪塩」は会社名にもなった

 雪塩の魅力を広く伝えるため、同社は2004年に塩の専門店「塩屋(まーすやー)」をオープン。国内外から集めた750種類以上の塩を取り扱い、独自の「ソルトソムリエ」制度も設け、塩の魅力を伝えるというビジネスモデルを構築した。宮古島には「雪塩ミュージアム」を製塩所に併設し、製造工程の見学や関連商品の販売を行っている。調味料メーカーとして確固たる地位を築き上げてきた。

 そして2024年10月、創業30周年を機に現在の社名に変更したのである。

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