しかも、もっと言えば「睡眠改善や疲労回復」もビミョーだ。この分野は他よりもプラセボ効果が高いといわれているからだ。例えば、早稲田大学教授で精神科専門医・睡眠医療総合専門医である西多昌規氏は睡眠薬のプラセボ効果について、このように指摘している。
「睡眠薬の治験でも、比較対照とするプラセボが思いのほか効いてしまい、本物の薬の効果を実証することが難しいことは、よくあることである。睡眠薬とプラセボとの32本の研究論文を統合したメタ解析では、プラセボの効果は明らかであり、63.56%もの睡眠薬の効果が、プラセボでも得られた可能性があるという」(2022年6月5日 Yahoo!ニュース エキスパート)
ならば、同じく睡眠の質改善や疲労回復効果の実証などで、リカバリーウェアでもプラセボが効いた可能性があるのではないか。
これこそが「ちょっと怪しいリカバリーウェア」がバカ売れするカラクリだ。ただ、ここで誤解していただきたくないのは筆者はリカバリーウェアを批判しているわけではないということだ。
遠赤外線だろうがプラセボだろうが、実際に着用した人が何かしらのいい効果を感じているというのは、紛れもない事実だ。しかも、医薬品や紅麹サプリメントのような「健康被害」が起きる可能性もゼロに近い。
つまり、「ちょっと怪しい」けれども、消費者に不利益をもたらすものではなく、健康増進効果を期待できるというものなのだ。
そんなリカバリーウェアにうってつけの人々が、これから日本で増えていく。カンのいい方はお気付きだろう、「高齢者」である。
さまざまな調査で、高齢者のほうがプラセボ効果が高いことが分かっている。しかも、テレビや新聞で何かが報道されると、それに強く影響されて実際に行動してしまう「アナウンス効果」も受けやすい。
分かりやすいのはコロナ禍で、「トイレットペーパー不足というデマがSNSで流れています」とワイドショーなどで連日報道したら、デマだと分かっているのに多くの高齢者が、ホームセンターやドラッグストアに押しかけて、トイレットペーパーを買い占めた現象だ。
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