電通グループ、AIネイティブ化を加速 マーケティングを変革する「2つのモデル」とは？

[小松恋，ITmedia]

　電通、電通デジタル、電通総研、コンサルティング事業などを手掛けるイグニション・ポイント（東京都渋谷区）の4社は、2024年8月に発表した独自のAI戦略「AI For Growth」を刷新し「AI For Growth 2.0」を発表した。AIエージェントがマーケティングの全工程をサポートすることによって、マーケティング領域のAIネイティブ化を目指す。

電通グループのAI戦略図

2つの中核モデルでマーケティングを変革　「AI For Growth 2.0」とは？

　AI For Growth 2.0は、電通グループが持つ大規模調査データや社内の専門人材の知見とAI技術を融合したAIモデルを深化させ、マーケティング手法に革新をもたらすという。1億人規模の仮想ペルソナを再現する「People Model」と、社内のクリエイターやプランナーの発想プロセスを学習した「Creative Thinking Model」を開発・拡充した。

AIネイティブ化のイメージ図

　People Modelは、電通が独自に蓄積した大規模調査データを大規模言語モデルでファインチューニングし、1億人規模の高解像度なペルソナを仮想再現するAIモデルだ。従来のように一部の属性に限定されることなく、多人数・多層のペルソナ群を自由に設定でき、時間や属性の制約を受けずにアンケート調査やマーケットシミュレーションを実施できる。

　また、アンケート調査では設問数に制限がなく、コンセプトやクリエイティブアイデアの高速な検証が可能だ。さらに、学習データにない未知の質問にも柔軟に対応できるため、調査対象者の確保が難しい属性についても仮想インタビューを実施できる。

　Creative Thinking Modelは、AI広告コピー生成ツール「AICO2」の第2弾として、東京大学AIセンターとの共同研究をもとに開発した。社内専門人材の思考プロセスをAIに学習させることで、高度なビジュアルアイデアの生成ができるという。従来手法と比較して、クオリティーやインパクト、時代性など複数の観点で有意な向上が認められている。

People Modelの概要イメージ図とCreative Thinking Modelのビジュアルアイデア生成図

　この2つのAIモデルに加え、電通の「AIQQQ FLASH」「AIQQQ TALK」、電通デジタルの「∞AIR」、両社が展開する「AICO2」などのAIアプリケーション群とデータ連携を図り、ユーザーとの対話を通じて最適な答えを導く「統合マーケティングAIエージェント」の開発も進めている。

　さらに、業務プロセス改革への伴走支援や顧客ニーズに応じたカスタマイズ型AIエージェントを構築することにより、マーケティング業務の高度化・効率化・内製化を実現。企業のAIトランスフォーメーションを総合的に支援していく。

　電通グループは今後もAI For Growth 2.0を基盤に、「業務効率化」と「価値向上・事業成長」の両面から顧客や社会の持続的な成長に貢献していく。