実用的な物理スペースを確保することも重要だが、それをどう使うか次第で労働環境の質は大きく左右される。
「多くの従業員を戻したのに、実際にはスペースが足りていないという罠に注意せよ」とファラ氏は警鐘を鳴らす。つまり、「リモート主体の会社が、オフィスをあくまで“リモート業務用”に使う」という矛盾した状況に陥ると、従業員が会議用の部屋を占拠するようになる。「スペースが足りない」という結論は、誤解である可能性がある。
Gensler社では、パンデミック以降に改装されたオフィスと、手を加えていないオフィスの違いを調査した。その結果、「明確な差異があった」とマクラウリン氏は語る。例えば、ロンドンのEdelman社本社「Francis House」は、露出天井や温かみのある色調を取り入れた改装済みの倉庫で、会議室と共同作業スペースがうまく組み合わされている。
一方で、多くのオフィスでは「仕事の内容に空間が合っていない」という単純な問題がある。「人々は、仕事をするためにオフィスに来たいのだ」とマクラウリン氏は述べる。「私たちは4年にわたって『オフィスの目的とは何か』を問い続けてきたが、従業員の答えは一貫して『仕事をしたい』である」(マクラウリン氏)
どのスペースが避けられているか? 逆に、意図とは異なる使われ方をされている場所はどこか? それに応じてオフィスを再構成することが必要だ。
出社再開を成功させるには、「最も重要なチームは経営陣だ」とファラ氏は指摘する。経営陣が出社に関する業務を適切な部門に割り振り、組織全体の方向性を示す必要があるからだ。
しかし実際には、多くのCFOや上級役員が、採用時に勤務地の移転を免除される取り決めをしているとCFO Dive誌は報じている。「『言うことを聞け。でも自分は従わない』という姿勢ではだめだ。それでは、出社命令など通用しない」(ファラ氏)
一方で、「現場のマネジャーたちは、出社してきた部下をサポートできるよう権限を与えられるべきだ」とマイクセル氏。「従業員が助けを求める相手は、まず直属の上司だ」(マイクセル)。そのため、マネジャー向けのトレーニングやリソースも整備すべきだという。
彼女のチームでは、長期間リモート勤務だった従業員向けに再オンボーディングを実施している。これは、現場で必要となるツールへのアクセス方法を教えると同時に、マネジャーがそのサポートを行えるようにするためのものだ。
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