物理的な環境を整え、リーダー層への周知が済んだら、次は人事部門が中心となって「出社ポリシー」を策定する必要がある。これには、コアタイムや通勤配慮の要素が含まれる。
Density社では、全員が午前10時から午後3時までオフィスにいる「共通勤務時間」を設けているという。当初は柔軟性が失われるように感じられるが、「実際には好評だ」とファラ氏は話す。誰とでもその時間内に会うことができ、対面ミーティングの予定が立てやすくなるからだ。
こうしたルールがあることで、マネジャーが明確な境界を設けつつ、各自の都合にも対応しやすくなる。例えば、家庭の事情で早退する必要がある場合でも、チームはその制約の中で柔軟に対応できる。
マイクセル氏は「出社の目的を明確にしなければならない」とも指摘する。「成功を望むのであれば、オフィスで過ごす時間を“意図ある時間”にしなければならない」。例えば、出社して会議やブレインストーミングを行うことが期待されているのなら、それをポリシーに明記し、ガイドラインとして提示すべきだという。
ファラ氏は「ポリシーはシンプルかつ実用的でよい」と話す一方、「出社を命じるならポリシーなしではだめだ」とも指摘する。
マクラウリン氏は、Zoom会議を必要以上に詰め込むのではなく、自然な会話が生まれる時間と空間を意識的に作るべきだと提言している。Genslerの調査によれば、そもそも人々が出社を望む主な理由は「会話」にある。
同社が「オフィスでの最重要な働き方」について調査したところ、最上位に来たのは「スケジュールされたチーム会議」だったという。しかし、次に続く3つは全て「対面での会話」であり、即興的な雑談も含まれていた。そのため、Gensler社では会議の開始時刻を毎時5分後、終了を5分前とし、そうした「意味ある瞬間」が生まれるように工夫している。
マイクセル氏は「出社する価値を提供せよ」と強調する。「従業員を出社させるのなら、何のためなのかを明確にしなければならない」(マイクセル氏)。そして、その期待の変化が摩擦を生む可能性があることにも注意が必要である。
「企業は言いたがらないが、出社を巡る対立は避けられない」とファラ氏は述べる。「企業はチームに対して『80%のことは、会社と個人の利益が一致している。だが20%は一致しない』と説明すべきだ」(ファラ氏)。出社命令も、その「一致しない20%」に含まれる可能性がある。リモート勤務がもたらした個人の自由と、チームとしての最適な運用は、しばしば対立するからである。
「私たちの仕事は、個人ではなく“チーム”にとって最善のことを選ぶことだ」と、ファラ氏は締めくくった。
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