「dアカウントだけは勘弁」 ドコモによる住信SBIネット銀行買収に広がる不安の声(4/5 ページ)

» 2025年06月06日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

ドコモ口座事件の影

 2020年9月に発覚した「ドコモ口座」不正引き出し事件は、いまだに多くの人々の記憶に残っている。

 第三者が他人の銀行口座から不正に預金を引き出す事件が相次ぎ、被害は120件以上、総額約2800万円に上った。ドコモ口座と連携していた地方銀行を中心に被害が拡大し、金融業界全体に衝撃を与えた。

 原因は本人確認の甘さだった。口座開設時にメールアドレスだけで登録でき、銀行口座との連携も口座番号と暗証番号だけで可能だったことが悪用された。事件後、ドコモは本人確認を強化し、eKYC(オンライン本人確認)の導入など対策を講じたが、「金融サービスを軽視していた」という批判は根強い。

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 今回の買収発表後、SNS上では「あの事件を起こしたドコモが銀行を持つなんて」「セキュリティは本当に大丈夫なのか」という不安の声が相次いだ。

 セキュリティとユーザビリティは二律背反の関係にある。住信SBIネット銀行が評価されているのは、ユーザーにとって使いやすいまま、高いセキュリティを維持している点だ。有効性も怪しい複雑なセキュリティ対策をたくさん盛り込んだ結果、使いにくくなってしまっている大手金融機関は多い。

 逆に、ユーザー利便性を重視しすぎた結果セキュリティが甘くなってしまっているベンチャーもある。そのバランスを高い水準で実現しているのが現在の住信SBIネット銀行だ。他にさきがけてFIDO認証を導入し、振り込みなどの手続きにおいても生体認証だけで行える仕組みを構築した。

 ドコモ傘下になることで、こうしたバランスが崩れるのではないか――そんな懸念が広がる中、ドコモは金融経済圏の構築という大きな野望を掲げている。

 会見では具体的なセキュリティ強化策への言及はなかった。住信SBIネット銀行の円山社長は「高度なセキュリティ」を同行の強みとして挙げたが、統合後もその水準を維持できるか、ドコモの過去の失敗を踏まえた新たな対策があるのか。

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