宮古島に起きている人手不足の根本的な原因として、川満氏は「住宅問題」を挙げる。
「コロナ禍前から現在もなおホテルの建設ラッシュが続いており、県外から作業員が大量に来島しています。島内には十分な建設業者がいないため、これらの作業員用のアパートを次々と借り上げるか、あるいは新しく建設しています。その結果、一般住民が借りられる住宅がなく、家賃も高騰しています」
現在、ワンルームアパートの家賃は月額9万円を超える水準に達している。以前は月4万円程度で新築ワンルームを借りられたというから隔世の感がある。
「地元の若者は一度島を出ると、以前は仕事がないから帰れませんでしたが、今は仕事があっても帰れません。住む場所がないからです。賃金は少しずつ上がっていますが、それ以上に住宅コストが上昇しており、家賃を払ったらもはや生活できない状況です」
土地価格の高騰も深刻な問題となっている。特に外資系ホテルチェーンの進出により、土地取引価格は異常な水準に達している。
「外資系ホテルが億単位で土地を購入しています。伊良部島では海岸線のほとんどがリゾートホテル用地として売却されてしまいました」
2025年の地価公示では、住宅地の地価上昇率において「宮古島市上野字野原東方原1104番」が23.1%と、全国で3位になったほどの高騰ぶりである。
さらに、表面化しにくい問題として“隠れ住民”の存在がある。
「住民基本台帳上の人口は約5万5000人で何年も変わっていませんが、実際には2万〜3万人の“隠れ住民”がいるとみています。主に短期の就労者や移住者ですが、当然、彼らは住民税を納めていません。実際の人口は増加しているのに税収は変わらないという歪んだ状況です」
一方、元来の宮古島住民は高齢化により減少傾向にある。このままでは若者が戻れる環境がなく、宮古島出身者によるコミュニティーそのものが存続の危機に瀕する可能性がある。
こうした状況を受け、行政も動き始めた。1月に就任した嘉数登新市長は、若者の住宅確保を“1丁目1番地”の課題として位置付け、4月には専門部署を新設した。
空き家の利用、市営住宅の開放、廃校舎の利活用など、多角的なアプローチが検討されている。特に廃校を短期宿泊施設として活用し、労働者向けの住環境を整備する提案も出されている。
宮古島の観光ブームは確かに経済効果をもたらしているが、その代償として深刻な社会問題を生み出している。人手不足、住宅不足、土地価格高騰、交通問題など、複数の課題が相互に関連し合い、住民の生活を圧迫している。
観光客数の増加だけを追い求めるのではなく、持続可能な観光のあり方を模索する必要がある。
後編では、宮古島観光協会の具体的な対策と、DMO(観光地域づくり法人)設立による新たな地域経営の可能性について詳しく取り上げる。
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