「ザル経済」に終止符を――宮古島が挑む“稼げる観光地”への改革地域経済の底力(1/3 ページ)

» 2025年06月09日 08時00分 公開
[伏見学ITmedia]

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


 コロナ禍後における、観光地としての宮古島の現在地を取材した本企画。前編では、宮古島の観光ブームの光と影を見てきた。2024年度に観光客数119万人という過去最多記録を達成した背後には、深刻な人手不足、住宅問題、土地価格高騰などの課題が山積していることが明らかになった。

 後編では、これらの課題に対する宮古島観光協会の取り組みと、持続可能な観光地域づくりへの挑戦を追う。

宮古島の海はその色合いから「宮古ブルー」と呼ばれる

設立から3年、登録DMOに

 宮古島観光協会の川満正寛事務局長が強調するのは、観光客数の追求から質の向上への転換である。その象徴が、3月に認定された登録DMO(観光地域づくり法人)での活動だ。

 「コロナ禍前は観光プロモーションが中心で、『宮古島においで、おいで』と外ばかりを向いていました。しかし、いざ観光客が増えると、何のためにやっているのか疑問に思うようになりました。海外の大型クルーズ船が来た時期には道路や店が大混雑することで、島民からは『外国人をこんなに呼んで、俺たちのために何にもならないじゃないか』と厳しく叱られました」

宮古島観光協会の川満正寛事務局長

 この反省から、宮古島観光協会は地域住民への貢献を最優先に考えるように。そこでDMO設立に向けて動き出し、2022年3月には同協会は観光庁から候補DMOとして認定された。これは単なる組織の発足ではなく、観光業のあり方そのものを見直す転換点となった。

 「DMOの目的は地域を稼がせる仕組みを作ることです。観光協会だけでなく、行政、JA、漁協など、あらゆる関係者を巻き込んで議論した結果、1年間の検討を経てDMO設立を決断しました」

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