登録DMOになったことによって、宮古島観光協会は国の補助事業に申請できるようになった。現在進めているのが、島民を対象とした観光ガイド人材育成プログラムである。
「島の文化を案内できるガイドを養成し、インバウンドにも対応できる体制を整えています。ガイドのスキルをランク付けし、Aランクならガイド料3万円といった付加価値を設定する構想です」
単なる観光案内ではなく、宮古島独自の文化体験も提供する。例えば、伝統的な飲酒文化「オトーリ」を外国人観光客に紹介し、その歴史的背景を解説することで、文化的価値をコンテンツに変え、経済価値に転換する試みが行われている。
「ローズウッド宮古島の総支配人から『オトーリは素晴らしい文化だ』と言われました。島民にとっては当たり前のことでも、外部の人には貴重な体験となります。こうした島の文化をコンテンツとして売り出していくことが重要です」
経済面において宮古島が抱える構造的問題の一つが、いわゆる「ザル経済」だ。これは観光による収益が地域に落ちずに外部へ流出してしまう状態を指す。一例を挙げると、宮古島では食材の多くを本土からの輸入に依存している。川満氏によると、年間の食材需要約110億円のうち、地元産が占める割合は1〜2割程度にすぎないという。
「観光収入以上に支出の方が多いのが現状です。観光客が増えたと喜んでいる場合ではなく、お金がどこに落ちているかを考えれば、この構造を変える必要があります」
この問題を解決するため、宮古島では「しまさんにしましょう!」をキーワードとした地産地消推進運動を展開している。もっとも、単なる愛郷心に頼るのではなく、品質や栄養価の優位性を訴求することで、消費者の行動変容を促している。
「スーパーで100円の県外産ネギと200円の宮古島産ネギがあれば、多くの人は100円のネギを選びます。しかし、宮古島産ネギの栄養価やおいしさを理解してもらえれば、200円でも選んでもらえるはずです」
宮古島“観光バブル”の代償──倍増した家賃、住めなくなる地元民……変わりゆく現実
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