では、人材育成の観点から、こうしたギャップをどう乗り越えていけばよいのでしょうか。ダグラス・アダムズの法則を前向きに解釈すれば、世代間でデジタル技術に対する考え方が違っていても、それはむしろ自然なことなのかもしれません。もしそうならば、このギャップを前提とした「心」(マインド)の変化を促すことのほうが効果的でしょう。
私は教育や心理学の専門家ではないので、どうすればいいのかという答えを持っていません。
少し楽観的に考えると、この課題は世代交代により自然解決する(時間が解決する)のですが、職員減少により行政運営が成り立たなくなってからでは遅いので、今からでもなにかの強制力を持って変化を促したほうがいいのかもしれませんね。
私がDX専門官として業務に従事している栃木県宇都宮市では、デジタル人材育成の一環として、2025(令和7)年度当初予算に職員のITパスポート資格取得奨励策を盛り込みました。職員の受験手数料を助成する経費として約175万円が計上されており、職員に対するITパスポート試験などの受験支援が正式に位置付けられています。
宇都宮市はこの施策において約234人の職員を対象にITパスポート試験の受験奨励を行う計画です。市役所の全職員数は約3200人であり、全体の約7%程度に当たります。この割合の職員にまず受験を促し、ITパスポート合格者を増やすことを目標としています。
なお、将来的には「基本的には全ての職員を対象」に拡大し、試験を受けて合格した職員に補助を行っていく方針が示されています。
全ての職員!
最初、この計画を職員から聞いたときには「なんて無謀な取り組み!」と思ったのですが、どうやら大真面目に考えているようです。そして、もしこれが実現できたら、宇都宮市は本当に変わるのかもしれない、という期待もありました。
「デジタル技術に対する知識向上」ではなく、「デジタル技術を避けないマインド」になるのならば、ダグラス・アダムズ風に言えば、宇都宮市は「壮年期」から「青年期」ぐらいまで若返るのかもしれませんね。
次回もデジタル人材育成について考えていきましょう。
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