「甘酸っぱい初恋」の象徴だったカルピスが、“甘いだけ”になりつつある理由スピン経済の歩き方(4/8 ページ)

» 2025年06月18日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

生活から消えていった「酸味」

 昭和世代の方ならば共感していただけると思うが、われわれが子どものときは「酸っぱい食べ物」もしくは「甘酸っぱい食べ物」がそこら中にあった。例えば、駄菓子屋に行けば、「さくら大根」「カットよっちゃん」「都こんぶ」「梅ジャム」などが人気で、梅ジャムを吸いながらかくれんぼなどをした人もたくさんいるはずだ。

 食卓や弁当には、頼んでいないのに「梅干し」が出てきたものだ。たくあんやぬか漬けなどの“発酵漬物”もおかずの定番だった。マンガやアニメの登場人物もよく「日の丸弁当」を食べていた。

「日の丸弁当」(出典:photoAC)

 しかし、この20〜30年でそういう「酸味」がわれわれの生活からどんどん消えていった。例えば、梅干しの消費量は激減している。総務省家計調査で2022年における1世帯当たりの年間消費量は650グラム。これは20年前と比べて約4割減っている。

 駄菓子屋では「うまい棒」や「ブラックサンダー」「きなこ餅」などが人気で、何だかよく分からない「酸味料」を用いた、甘酸っぱいお菓子の存在感は薄れている。

 そして、そんな「酸味の減少」を最も象徴している現象が「果物離れ」である。

 最近の米を巡る過剰な反応で「日本人が米を食べなくなったのが悪い」的な責任転嫁をするコメンテーターもいるが、食べなくなったといえば、果物もかなりのものだ。

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