「甘酸っぱい初恋」の象徴だったカルピスが、“甘いだけ”になりつつある理由スピン経済の歩き方(6/8 ページ)

» 2025年06月18日 06時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

カルピス離れの「兆し」も

 「いやいや、そんなの関係ないだろ。私はスイーツも大好きだけど、カルピスもよく飲んでいる。甘さアピールなんかしなくたって、これからも飲み続ける」という人もおられるだろうが、そういう人は「カルピスファン」なので、そもそもこのマーケティングの対象外だ。

 もっといえば、この問題は、目先のファンよりも中長期的な「危機」の回避に重きが置かれている。今後も日本で「甘いもの」を好む人たちが増えていく中で、「カルピス=甘酸っぱい」イメージのままだと、「最近飲んでないけど、たまには買ってみようか」という「リピーター」が減ってしまう恐れがあるのだ。

 その「兆し」も見えてきている。アサヒ飲料のファクトブック2024年を見ると、2019年の乳性飲料は4887万箱だったが、2024年は4245万箱と642万箱減少している。同じ時期の炭酸飲料と比較すると、1472万箱増えているにもかかわらず、だ。

カテゴリー別規模推移(出典:アサヒ飲料)

 もちろん、事業にはポートフォリオがあるので、「規模縮小=カルピス低迷」という単純な話でもない。ただ、月別の販売動向を見ると厳しいときがあるのも事実だ。

 例えば、2024年8月のアサヒグループの販売動向を見ると、三ツ矢サイダー、カルピス、ワンダなど、6つのブランドはすべて前年比121%だった。

 しかし、カルピスだけ前年比91%なのだ。

ブランド別販売数量前年比(出典:アサヒグループホールディングス)

 他にも6ブランドが総じて販売が振るわない月でも、カルピスはさらに低調だったこともある。何らかの「テコ入れ」が必要なのは間違いない。

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