中国のXiaomi(シャオミ)の高性能EVセダン「SU7 Ultra」がドイツのニュルブルクリンク北コースでEVセダンのコースレコードを更新したことが報じられた。今日のモーター技術、バッテリー技術、サーマルマネージメントを駆使すれば、途方もない速さを実現するのはある意味簡単だ。
足回りとブレーキを作り込み、高性能なタイヤを履かせてスキルの高いドライバーに運転を委ねれば、ラップタイムはみるみる縮まるだろう。しかし市販車において重要なのは、そんな一発の絶対的な速さではなく、誰もがいつでも安心して走れる操縦性や信頼性、耐久性を備えていることだ。
障害物を検知して衝突3秒前に警告を出したのちに、運転を突然ドライバーに任せるような自動運転システムを量産車に搭載している時点で、ユーザーの命を軽視しているかのような印象を与えるのは否めない。幸い日本にはまだ上陸していないが、仮に発売されたとしても、販売台数はBYD同様に限られるだろう。今は中国や韓国でユーザーが信頼性や耐久性のテストをしていると思えるような状況だ。
日本の電池メーカーや自動車メーカーが生産するリチウムイオンバッテリーたち。形状やサイズなどさまざまなモノが並ぶが、どれも品質を最優先しており、性能やコストは品質が担保できてこそ意味があるという姿勢を感じる(筆者撮影)したがって、BYDが軽規格EVを作っても、その品質に対する姿勢がこれまでのEVと変わらなければ、日本市場ではそれほど売れることはないだろう。
いかに高性能でリーズナブルであろうとも、他社には真似できないほどのノウハウがなければ、見えない部分で手抜きをしていることになる。そうでなければ不当なダンピングをしていると考えられる。
外貨を稼ぐために中国政府が補助金政策によって価格競争を仕掛けてきたとしても、日本のユーザーは安全性重視。それを日本の自動車メーカーは十分に理解している。時間はかかるだろうが、海外でも日本ブランドのEVの安全性が評価される時代がきっと来るはずである。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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